それは愛しい君の一部くい、と袖を引かれるような感覚を覚える。振り向けば、己とは異なる服飾を身に纏った自身がそこに立っていた。ただいつもと異なる点と言えば、カンテラに収められた炎が不安げに揺れていることだろうか。
「ん?どうしたんだ?」
迷子の子供にでも声をかけるように、機械の膝を折り曲げてスペースポリスは彼に問いかけた。いつもであれば彼は歌姫達と一緒にレコーディングをしているはずだ。
歌姫をモデルとして作られた彼は、少し顔を俯かせ、己の喉をゆっくりと撫ぜた。
「嗚呼、なるほどな。上手く声が出ねえのか」
喉を撫でる仕草と、微かに彼の喉から聞こえる異音。おそらくは彼のボディに組み込まれた音声機材のトラブルだろう。最も、その異音は虫の羽音より小さく、その僅かな異音を聞き取れたのはスペースポリスが機械の体であったからだが。
1337