葬送青い空に一筋の煙が登る。
火葬場の煙だ。
我が最愛の友を天に帰すための煙だ。
目玉の姿で息子の頭の上、空に消えていく白い筋を追う。
斎場では天寿をまっとうした友を、見送る人々の涙と笑顔がいくつも見られた。
大往生だ。寂しくはあっても悲壮感はない。
多くの人に愛された男の生涯を見届けることができた。
全部喰うてやる、という約束は果たせず終わった。
もともと生に執着のない友人を宥めるためのお為ごかしにしかすぎなかったが騙したことには変わりない。
もちろん食えるものなら食ってやりたかったが、全ては浄化の火の中だ。
視界に、ちょろりとネズミが一匹、息子の足元を駆け上るのが見えた。
「父さん」
「うむ」
息子に促され髪の中から手の中に降り立つ。
手のひらまで登って来たネズミの口元から小さな白いかけらがころりと落ちて、足元に転がった。
骨だ。
焼かれてすっかり軽くなった、あの男の骨だった。
目玉には余る大きさのその骨を、無理やり口に押し込んで、噛み砕いて飲み込んだ。