初めての夜のあと(ヒカテメ)「テメノス」
包まった布団の中からでは外の声がぼんやりとしか聞こえない。
「テメノス、大丈夫か?」
いま私は布団に包まって、そこに立てこもっている。外からはヒカリが私を気遣って優しく声をかけてくる。
昨夜ヒカリと恋仲になって、初めて身体を重ねた。
恥ずかしながらこの年になるまで、そういった経験はなく、性欲というものも比べたことはないが他者よりはきっと薄いだろうという自覚はあった。
そんな自分が男同士、そして相手を受け入れる立場というものになったのだ。
正直なところ経験はなく、ヒカリを満足させられるかすら不安であった。彼は王子だ。きっと引く手数多だったろうし、そういった経験も聞いてはいないがあったかもしれない。30も過ぎて、柔い体も豊かな膨らみもなく、硬いばかりの面白みのない男の身体では準備とやらも大変で面倒ばかりだったろう。
2159