不穏な気配を察知しました 背後から脇の下を通って伸ばされた腕が深津の身体に絡みつく。ぎゅっと強く肋骨のあたりで結ばれた沢北の両手が「行かないで」そう言っているようにも思えて、深津は身動きもせず囚われたままでいた。
――放課後。ドアの隙間から夕焼けの光が線となって落ち、遠くではどこかの部活の掛け声が聞こえてくる。
「どうしたピョン」
「……」
沢北がイヤイヤと否定するように頭を左右に動かす。深津の肩に頭を埋めているのだろう。短く刈り上げられた髪が首筋に触れている。髪の先がチクチクと肌に刺さるのがくすぐったくて反射的に肩をすくめれば、逃げると勘違いしたのかさらに深津を拘束する腕の力は強まっていった。
「逃げないピョン」
「……」
「ほら」
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