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    aimai_tarou4

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    aimai_tarou4

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    1/26のイベント時の無配です。
    何回拗らせるのかっていうモブ女からの告白があります。

    不穏な気配を察知しました 背後から脇の下を通って伸ばされた腕が深津の身体に絡みつく。ぎゅっと強く肋骨のあたりで結ばれた沢北の両手が「行かないで」そう言っているようにも思えて、深津は身動きもせず囚われたままでいた。
     ――放課後。ドアの隙間から夕焼けの光が線となって落ち、遠くではどこかの部活の掛け声が聞こえてくる。
    「どうしたピョン」
    「……」
     沢北がイヤイヤと否定するように頭を左右に動かす。深津の肩に頭を埋めているのだろう。短く刈り上げられた髪が首筋に触れている。髪の先がチクチクと肌に刺さるのがくすぐったくて反射的に肩をすくめれば、逃げると勘違いしたのかさらに深津を拘束する腕の力は強まっていった。
    「逃げないピョン」
    「……」
    「ほら」
    「……」
    「言わないとわからないピョン」
    「ふかつさんが」
     ひどくしゃがれた声だった。ずっと話すのを我慢していたような、鼻にかかるくぐもった声が深津を呼んだ。
    「うん? どうしたピョン」
    「……女子に告白されてた」
    「いつ」
    「昨日。昼休み」
    「あ」
     心当たりがあった。思わず漏れた声に沢北が反応する
    「やっぱり。見てたんですからね。ラブレター受け取ってましたよね。何で断らないんですか」
    「あれは……」
    「なに、俺がそう言うの気にしないって思ってましたか? 別に言い訳してもいいっすけど、別れるだけは許さないっすから」
     畳み掛けるように沢北は言う。そしてもう一度「別れないから」と言った。ぎゅうと拘束が強まった。
    「いや、手紙を貰っただけで告白はされてないピョン」
    「え? 本当に? いや、騙されない」
    「俺の言うことより、知らない女子のことを信じるピョン?」
    「や、う、ぇー……。そんな訳じゃないっすけど」
    「――俺は、告白されてないピョン。信じるピョン?」
     ゔぅ、と背後で沢北が唸った。すると、控えめに部室のドアがトントンと音を立てた。
    「深津?」松本の声だ。
    「先生きたピョン?」
    「いやまだ」
    「もう行くピョン」
    「わかった。先生遅れるって、よかったな」
    「ありがとう」
     ぐすっと鼻を啜る音を背後に会話しながら、胸下で組まれた両手を宥めるように撫でた。松本が去ってからもしばらくそのままでいると少しして沢北が「もう大丈夫です」と言った。
    「本当ピョン?」
    「うん、深津さんのこと信じてるから」
     沢北は拘束を解く。長い間背後にあった温もりが離れて行った。
    「先行ってろピョン。俺は着替えてから行くピョン」
     沢北の頭の上にハテナが見えたので、ここ、と肩を指し示す。途端に意味を理解した沢北が「あ!」と声を上げた。
    「俺の涙じゃないっすか……」
    「そうピョン。だから先行ってろピョン」
     申しなさげに頷いた沢北は手にタオルを持って慌ただしく部室を出て行った。
     一人残ると誰もいない部室の静けさが際立つようだった。
    「……」
     誰も見ていない。誰にも聞かれていない。その事を再度確認し、深津はジャージのポケットに仕舞っていた手紙を取り出した。
     ピンクの封筒には丸っこい文字が書かれている。
     ――沢北くんへ
     昨日の昼休み、沢北が言うように深津が女子生徒から呼び出しを受けていたのは事実だった。しかも用件は告白。そこまでは沢北の推測と相違ない。
     だけれど深津が呼び出されたのは、深津への告白という訳ではなく、沢北へ手紙を渡して欲しいといういわば伝書鳩的な役割で呼び出されていた。
    『深津くんと仲がいいって聞いて』
     女子生徒は手紙を押し付けるようにして深津へ渡した。
    『……沢北には付き合ってるやつがいるピョン。だから想いには応えられないと思うピョン』
     もうお決まりの言葉を口にすると、知らなかったのか女子生徒の目が見開かれ、驚きに染まる。
    『そ、うなんだ。ありがとう教えてくれて』
    『悪いピョン』
     全く悪びれていない表情で深津は謝った。――沢北を渡すわけにはいかないんだ、ごめん。そんな意味も含ませているのだけれど、女子生徒は気付いた様子もなかった。
    『その手紙だけでも沢北くんに渡してほしいな』
     深津は何も言わずにポケットへと仕舞った。彼女はそれを了承と受け取ったようでその場を去って行った。

     沢北は深津が告白されたと誤解していたが、まさかそれが自分への告白だったとは思わないようだった。沢北はモテる。それこそ他校の女子生徒がわざわざ練習に見にきたり、試合で出待ちをしているくらいには。一応、付き合っている身として面白くない気分ではあるものの、実際に沢北が告白される時は期待を一切含ませない百パーセントの「ごめんなさい」で断るので、告白されること自体はさほど気にしていない。
     だけれど、間に自分を挟むのなら話は別だった。
     部室にはシュレッダーが置いてある。普段は名簿とか請求書とかを捨てる際に使っているが、あまり使う機会はないので埃をかぶっている。深津は手紙を持ちながらシュレッダーの前に立った。表面に浮かぶ埃を軽く手で払い、電源をつけて起動を待った。数秒後、青く点滅する光を確認して、その手紙を強く押し込んだ。
     ――誰が好き好んで恋人への告白を斡旋なんてするか。
     自分の見えないところで勝手にやってくれるのなら許容するが、仲をとりもてと言われるのなら話は別だった。不穏な芽は小さなうちに摘んでおくに限る。むしろ、そんな芽がなかったかのように事実ごと闇に葬るのが得策だった。深津は音が止まったシュレッダーの中身をビニール袋に入れ、口を閉じ、ゴミ箱へ投げ捨てた。
     肩に振れると、まだ涙で濡れてしっとりと湿っている。そのわずかな染みでさえ愛おしかった
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