一兎を追う④ラスト帰国後、悠仁は休学していた大学を出て友人と共に会社を立ち上げた。仕事が軌道に乗ると、業務の殆どを友人に任せ海外を飛び回る。
一番最初に行ったのはあのアジアのとある国だった。あの人が住んでいた家はまだあったが彼は居ない。
もう5年も経ってしまっていた。
悠仁は再び探し出す。不思議と焦燥感は無く、また必ず会えると何処かで確信めいたものがあった。
そうして仕事がてら地球を一周したあたりに、地中海に面したある国で鼻に傷のある日本人の噂を聞く。
その人は雑踏の中にいた。多くの品物や人々が行き交う中で、悠仁にはその人だけが違って見えた。だからすぐに分かった。彼もすぐに悠仁に気付き、目を見開いた。
そして悠仁の腕の中で美しく笑ってくれた。
2373