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    あだぷす

    @Adaps_A

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    あだぷす

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    前に真面目に書こうとしたヒカセンが監督生になる話を発掘したから供養がてら投げとこか 多分もう書かない(どちらにもネタバレはないけどそれなりに話が進んだ状態)

    この世界に来てから、しばらくの時間が経った。
    いろんな事件にも巻き込まれたが、そんなことは日常茶飯事。
    むしろ、死者が出ていないあたり実に平和だと思う。
    そういう日常に慣れてしまうのも、ちょっと、いやかなり、よくないことなのだろうが。
    それでも、自分は「戦うことを生業とする者」であるので、仕方のないことだろう。

    そんなことを考えてしまうのは、やはり夜だからだろうか。
    静かに寝息を立てている相棒をちらりと見て、やっぱり眠ることができずに身を起こした。
    ……少しだけ、夜更かしでもしようか。

    この世界にいる間だけは、戦いから遠い場所に身を置いている。
    肩を並べて勉強して、くだらない話で笑いあって、時折授業をサボって昼寝して。
    ぬるま湯につかっているような平穏だ。
    今も戦っているであろう仲間を思うと、ただただ、胸が痛い。
    今にも走り出してしまわないと、この焦燥は消えやしない。
    どこに?
    どこでもいい。
    此処ではないどこかへ。

    「おや、監督生さん」

    走り出して少ししたとき、声がかけられた。
    そこには、銀髪の青年がいた。
    アズール先輩だ。

    「どうも、こんばんは」

    当たり障りのない挨拶を返した。……返せたはずだ。
    そもそも、夜道で出会った際の普通の返答とは?
    自分にはわからない。戦うこと以外は、ほとんど。

    「はい、こんばんは」

    ひとまず、あっていたらしい。
    アズール先輩はにこやかに挨拶を返すと、足を止めた私の前に立った。背が高い。

    「こんな時間にどうされました?」
    「少し、走りたくなりまして」
    「……こんな時間に?」
    「おかしいと思います?」
    「ええ」

    実に正直な先輩だ。
    眼鏡をくい、と上げて、静かにこちらを見つめている。
    だが、確かにそうだ。
    こんな深夜に、走り出してしまうのは、普通ではない……らしい。

    「焦ってるんです」
    「焦り、ですか」
    「仲間はみんな、寝る間もなく戦ってます」
    「……」
    「眠れないんです。自分だけがこうして平穏の中にいるので」

    苛立ちと、焦りと、その他諸々。
    しっかりと抱えていたものを、少しだけ放してしまった気分だ。

    「変な話でした。忘れてください」

    だからこそ、拾いなおしていつものように笑った。
    笑えただろうか。きっと笑えただろう。わからない。

    「帰ります」
    「送りましょう」
    「紳士ですね」
    「慈悲の精神です」

    ふい、と踵を返せば、先輩は隣に来た。
    並んでオンボロ寮までの道をゆっくりと歩き始める。
    思えば、遠くまで来てしまったものだ。
    オンボロ寮からも、元の世界からも。

    「アズール先輩は、何をしていたんです?」
    「仕事ですよ」
    「なるほど」
    「そのうち、貴方にも手伝ってもらいましょう」
    「戦闘沙汰ならお任せですよ」
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