「寝るならベッドに行けよ」
「んー…………」
ソファの背もたれの向こう側に見える頭がゆらゆらとしているのを見て、カイザーは紅茶を注ぐ手を止めて声をかけた。二人分用意してしまったけれど、あの様子では飲めそうにない。かと言って二人分飲んでしまおうという気概もない。勿体ないけれど捨てるか、とネスの分のマグカップをキッチンに放置して、自分の分だけ手にしてソファへ向かう。
ソファの真ん中で船を漕ぐネスを退かして左側に腰を下ろして、髪の乾かし方が悪かったのかいつもよりさらに跳ねている気がするネスの髪に触れると、ネスの閉じかけた目がゆっくりと開く。とっぷりと潤んだ瞳がカイザーを見て、そのまま力を失ったように肩へもたれてくる。
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