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    aomi__2

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    ボツになったnski
    眠気に抗うnsさんと、nsさんを起こすためにちゅーしたら返り討ちされる(予定)のkis様

    「寝るならベッドに行けよ」
    「んー…………」
    ソファの背もたれの向こう側に見える頭がゆらゆらとしているのを見て、カイザーは紅茶を注ぐ手を止めて声をかけた。二人分用意してしまったけれど、あの様子では飲めそうにない。かと言って二人分飲んでしまおうという気概もない。勿体ないけれど捨てるか、とネスの分のマグカップをキッチンに放置して、自分の分だけ手にしてソファへ向かう。
    ソファの真ん中で船を漕ぐネスを退かして左側に腰を下ろして、髪の乾かし方が悪かったのかいつもよりさらに跳ねている気がするネスの髪に触れると、ネスの閉じかけた目がゆっくりと開く。とっぷりと潤んだ瞳がカイザーを見て、そのまま力を失ったように肩へもたれてくる。
    「おい」
    「……はい」
    頭頂部の髪を数本ひっつかんで引っ張ってみても、痛がる様子すら見せない。親に甘える子供のようにカイザーの肩に額を押し付けて腕をからませてくる姿を可愛いと思わないわけではないが、ネスのためにも自分のためにも、このまま眠りに落ちてしまうのは宜しくない。
    それをネスも分かっているからこそ、睡魔に意識を奪われてしまわないようにカイザーに額を押し付けることで抵抗しているのであろうが。時折発せられる意味の無い言葉を聞きながら紅茶を飲み、それが止まるたびに「寝るな」と声をかける。
    マグカップの中身が半分ほど減るまでそうしているうちに、ネスの呼吸が寝息に変わる回数が増えてしまった。結局甘やかしてしまった、とため息を吐きながら、いよいよ力強くネスの肩を揺らす。
    「んあ……はい、起きてます……」
    「ほとんど寝てるだろ」
    「はい…………」
    か細く、くぐもった「寝てます……」と付け加える声がなぜだか愛おしくて、カイザーはつい、自分の頬をネスの頭に寄せた。
    カイザーの温度を感じたのか、半分眠っていても幸せそうに声をもらすネスの甘い声が耳元を掠めていく。つられて、カイザーの唇の端から笑いがこぼれた。
    触り続けているうちに指通りの良くなったネスの髪から手を離して、肩を抱くようにしてもう一度声をかけた。
    「ネス、寝るならベッドに行ってしっかり寝ろ」
    「カイザーは…………?」
    「は?」
    「寝ないんですか、カイザーは」
    ぽつぽつと紡がれる言葉を必死にすくいあげて、それから、カイザーは一人で微笑みを浮かべる。
    ネスの問いかけを無視して肩に置いていた手を離すと、カイザーは意図的に、わざと甘い声を出した。
    「ねす」
    溶けてしまいそうだと自分でも思うくらいに甘い声は、空気を震わせて、しっかりネスの鼓膜を揺らした。
    「俺の目を見てお利口さんにお願いしたら、言うこと聞いてやる」
    「僕もう、眠くて目が開かないんです……」
    「じゃ、大人しくお前一人で寝るんだな」
    頑張って目を瞬かせるネスが自分のために懸命になっている姿に満足そうに笑いながら、カイザーはネスから顔を逸らした。あえて冷めた態度をとるとネスが慌てることを、よく知っていたから。
    「まってカイザー、意地悪しないで……」
    眠気のせいでゆっくりとした口調から逃れられずに、倒れ込むようにしてカイザーの腕に額を寄せてくるネスの頭を撫でてしまう。
    意地悪をしているつもりがあるから、カイザーは決まり悪く笑うことしか出来なかった。
    「じゃあ起きて歩けよ」
    「あぃ……」
    「ネス」
    縋り付くネスを離して腰をあげると、あくびでしっとりと濡れたネスの大きな瞳がカイザーを見上げる。なあに、と瞳で語りかけるネスの肩を押してソファの背もたれに着けさせた。
    自身の右腕もソファの背もたれに伸ばし、ネスの太腿の間に片膝を立て、左手でネスの頬に触れる。すり、と人差し指で撫でてやると、心地よさそうにネスの瞳が溶けて細くなる。
    この可愛いらしい顔が欲望と雄に満ちる瞬間がふとカイザーの頭にフラッシュバックして、ネスの熱が欲しくなる。
    自分がこんなにも求めているのに、目の前のネスは眠気なんかに意識を取られて、敗北寸前で身を揺らしている。それに腹が立って、カイザーはネスの唇に噛み付いた。
    「んっ、ぁ、え?」
    今度こそ見開かれた瞳を凝視しながら、僅かに開いた唇通しの隙間を埋めるように舌を差し出す。
    「な、カイザー?」
    「ん」
    眉をひそめて、右手で強めにネスの肩を押して要求すると、ネスの左手が迷うことなくカイザーの後頭部に回る。慰めるように髪を撫でられて、ネスの背中がソファから浮いた。
    「ふ、ん……ぁ、ね……す」
    苦しげに喘ぐカイザーの様子など気にもせず、すっかり覚めたらしいネスは正しく現実に用意されたご褒美を甘受している。
    「はぁ……っ、かいざー……」
    「……起きたか?」
    カイザーの問いかけにゆっくりと頷いて、甘えるようにカイザーの胸に擦り寄ってくる。
    「僕、お利口さんにお願いしました」
    「はあ?あれがか」
    「カイザーは少し強引なくらいが好きでしょう?」
    「どうだか」
    カイザーの好み通りにしたからお利口さんでしょ、とでも言いたいのか。先程まで眠たげにふにゃふにゃしていた顔は、しっかりとカイザーを真正面から捉えている。
    もう少しだけ意地悪をして可愛がっても良かったのだけれど、生意気にもしてやったり顔をするネスの表情に揺さぶられてしまったら、もうカイザーの負けだ。
    「ほら、寝るぞ」
    ネスの膝から降りて背を向けたカイザーに、ネスがぱっと表情をほころばせる。
    「ねえ、今夜は手を繋いで寝ても?」
    「手繋いだら、お前寝てる時にすぐ俺をお前の方に引き寄せるから嫌だ」
    「少しでも近くにいたくて」
    部屋や廊下の電気を消しながら、ネスが手を繋ぎたいと提案してくる。
    寝室に入る前にくるりと振り返ると、少し身長が低いのをいいことに、可愛いふりをして小首を傾げるネスがカイザーをみつめていた。
    どうすればカイザーが頷くのか、ネスはよく分かっている。ベッドに行けばその可愛さはなりを潜めて、丁寧さと乱暴さの狭間でカイザーに欲をぶつけてくる。それを知っているのに、カイザーはまた折れてしまった。
    「かわいこ、ぶりっこ」
    「わざとです」
    「クソ知ってる」
    寝室の扉を抑える逞しいネスの腕をさらりと撫でて、誘惑するように髪を靡かせる。
    眠気も忘れてベッドに倒れる二人を止めるものは何も無い。カイザーの指を掬って絡ませネスが恭しく口付けを落とせば、背後で夜が騒ぎ出す。
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