蛇と苺 空から降り注ぐ雨は風にはためくカーテンのように、地面に軌跡を描いていく。網戸越し、砂が流れるような音の合間、ぴたんぴたんと不規則に雨粒がコンクリートに叩き付けられる音が聞こえてきた。
ゴールデンウィーク三日目になっても勢いの衰えない雨雲を見上げながら、園芸部の花壇は果たして無事だろうかと男は思いを馳せた。普段はベランダに出しているプランターで手狭になった部屋の中は草花の匂いで充満していた。
いつも通りの時間に起床したはいいが、こうも天気の悪い日が続くとなるといい加減手持無沙汰だ。テレビをつける習慣もない彼は致し方ないとでも言わんばかりに立ち上がると、キッチンへ足を向けた。
朝食が最後の一枚になったライ麦パンになることは自然と決まっていた。彼はトースターラックに保管していたそれを取り出す。冷蔵庫の中から生ハムとクリームチーズを手に取り、それから蜂蜜も一緒にカウンターへ並べる。紅茶用の茶葉があったことも思い出すと、電気ケトルの電源も入れた。
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