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    たつき

    @sekiihiduki

    未完のとかちょっとアレなのとか投げるかも。

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    たつき

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    リンぐだ♀受肉後同居の受肉までの話。
    この後立香が成人するまで誰が道満の身元を引き受けるのかとか、親に何て紹介するんだとか悩んで進まない。
    完成→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19752366

    貴方の隣で夢を見たいカルデアでの全ての戦いが終わった。

    時間の感覚も分からなくなるような数年巡に渡る人理修復と異聞帯切除の旅。その全てが終わり、漂白された地球は元のテクスチャを取り戻した。

    「おめでとう立香ちゃん!」
    「ありがとう藤丸!お疲れ様!」

    職員やサーヴァントの皆が勝利を祝い、自らの生を讃えた。
    嗚呼、本当に素晴らしい幕引きだった。



    お祝いも終わり、後日ゴルドルフ新所長に呼ばれる。
    「藤丸、これからこのカルデアにはまた査問団が来るだろう。嫌な記憶を思い出すが今度こそ何も起こらないはずだ。…起こらないよね?勘弁してよ、ようやくこの世界とやらを取り戻したんだから。いや、何、その際貴様にもいろいろ聞かれるだろうが本当の事を言えばよろしい。もし協会が貴様を利用しようとした場合は、私だけじゃない、カルデア全職員が全力をもって守る事を誓おう。貴様は今までよくやった。むしろよくやりすぎだ。魔力もほとんどない一般人だった貴様がここまでやるなど、ここに来たばかりの私には信じられなかっただろう。これから平穏に幸せに暮らす権利があって当然。むしろ幸せにならなくちゃいかん!」
    そこでなんだが、と新所長は口をもごもごさせる。
    「何ですか?」
    「カルデア退職後の貴様には一生遊んで暮らせる給料と、その他にも色々保障があるんだが……私的にはちと足りないのではないかと…。貴様の成した大偉業にはもっと相応の報酬があってしかるべきだと思うのだよ。」
    「別にそんな、生きるのに必死だっただけで…。」
    謙遜するとすぐに新所長が声を上げる。
    「そんなんじゃダメだよ君ぃ!もっと強欲になりたまえ!ゴホン…あー、ともかくあれほど長い戦いだったのだから、余ったリソースの計算違いなどもある。そうだろう?」
    「はぁ…?」
    今一つ新所長の言わんとしていることが分からない。
    「保管庫に余った聖杯、まあ一個ぐらい減っていた所で報告書をちょちょいと直しちゃえばいいとは思わんかね?」
    「え!?」
    「あんなもの取っておいたってどう使われるのか分からん!それよりは善良な人間に使われた方がマシだと思うんだが。」
    「そ、そんなことしていいんですか?」
    「もちろんダメだ!ダメに決まってる!だが、世界を救った者に正当な報酬はこのぐらいしか思いつかんのだ!他の者には内緒だぞ。全て私が責任をとろう。」
    「新所長…。」
    「まだ時間はある。願いをどうするかはじっくり考えなさい。」
    部屋を出て頭を悩ませる。聖杯の使い道?色々ありすぎて今更願いなんて…。今までサーヴァント達に聖杯にかける願いを聞いてきたのを思い返してみよう。だめだ、ろくなの思い出さない。
    「どうした、世界を救ってこれ以上何を悩むことがある?」
    うんうん唸りながら廊下を歩いていると頭の上から声がする。
    「オジマンディアス!」
    パッと顔を上げると太陽王が目の前に立っていた。ピラミッドから出ているのを見るのは珍しい。
    「王者の気風もなければ戦士の気質でもなし。賢者ならず勇者ならず魔術の才もないただの人がよくもここまでやったものよ。だが、この上まだ望むことがあると?許す、よき働きをした民に褒美を取らせるのも王の役目。悩みがあるなら余が聞こう。」
    オジマンディアスを見上げ、目をぱちくりさせる。誰かに相談か、でも内緒って言われたし…。
    「そう見つめ返すものではない。余の光輝で貴様の目が潰れかねん。」
    「えっと、世界を救った褒美に願いを叶えてやるって言われたんだけど、欲しいものなんて思いつかなくって。」
    「ほう、底なしの強欲かと思えば、ただの無欲であったか。」
    オジマンディアスはふむと腕を組む。
    「その相手は貴様が信用に値するものなのか?」
    新所長は信じてるけど、聖杯は…どうだろう。でもわたし達が回収したのはあくまで魔力リソースとしての力しかないのかな。
    「あんまり大したことはできないと思うんだけどね。」
    「ならばそう悩むこともあるまい。貴様がこの先の人生で必要だと思うものを欲してみるが良い。貴様は故郷に帰ってこの先の人生を平凡に穏やかに生きるのだろう?」
    「必要なもの…か。」
    「戦いも終わった今、余も退去が近い。いつまでも死者に囚われるものではないぞ。貴様は生きよ。生きて幸福な人生を歩むが良い。」
    「ありがとう。ファラオ・オジマンディアス。」
    私はぺこりと頭を下げる。…二度目のサーヴァントの退去か。一度目は全ての特異点を修正してから。一度目の時よりサーヴァントもだいぶ増え、絆も深まった。
    「今のうちにみんなに挨拶しなきゃ。」
    廊下を駆け足で歩き、サーヴァント一人一人を探して回った。

    「子鹿!これから先アタシが誰に召喚されようとアタシのADは子鹿だけなんだから!他のアイドルに浮気したら承知しないわよ!」
    エリちゃん、わたしのセカンドサーヴァント。マシュと同じぐらい長い間ずっとわたしと一緒に戦ってくれた。

    「やあマスター、今まで散々こき使ってくれてありがとう〜!これで終わりかと思うと本当清々するよ。…ともあれこれから先きみの人生はようやくきみだけのものになったってわけだ。誰の物語を消費することもされることもない。そうだろ?」
    オベロン、文句言いながらなんだかんだいつも助けてくれたっけ。

    「マァスタァ〜!ようやく長期に渡る社畜生活を終えてカルデアを退職なさるのでしょう?ささ、こちらNFFサービスの契約書です🤍…え?帰ってちゃんと就職活動する?そんなぁ〜!」
    二人のコヤンスカヤに詰め寄られる。まあ、就活に失敗したら考えておこうかな…。

    「よお、マスター!最後のアンタ今までで一番カッコよかったぜ!座に帰ったらもう一人の俺にもアンタの話をたくさんしてやらないとな!」
    シャルルマーニュが笑顔でブンブンと手を振る。君もずっとカッコよかったよ。本物のカール大帝によろしく。

    「マスター君、どうしたんだ浮かない顔して。別れが寂しい?ははは、言っただろ?僕と君は焼山葛みたいなものだって。座に帰っても、君がマスターじゃなくなっても僕たちはずっと繋がってるんだから何を寂しがる必要があるんだ。それにこの僕が自分から契約してやる魔術師なんか後にも先にも君ぐらいだぞ。僕の最初で最後なんだからもっと胸を張りたまえ。」
    高杉社長、なんか今すごいこと言ってた気がする。

    ほとんどのサーヴァントと話した頃、廊下の向こうにアンデルセンを見つける。
    「なんだマスター、こんなところで油を売っている場合か?報告書の締め切りに追われてるんじゃなかったか?」
    「う、今退去前にみんなと話してるの。」
    「ほう、俺のような男と話したところで一銭の価値にもなりはしないものを。それに俺はもう少しここにいるぞ。」
    そういえば前回の退去の時もなんだかんだで最後の方までいてくれたっけ。
    「いつも〆切から逃げようとするわ、『肉体労働断固反対』って言って戦闘も嫌がるのに。」
    「俺も作家の端くれ、自分の関わった物語の結末を見届けたいと思うのは当然だろ?もっとも、実際にその結末を見れるわけではないが。普段の俺の書く話ならともかく、お前のような子供向けの冒険譚がバッドエンドでは敵わん。結局誰もが『めでたしめでたし』を望んでいるのさ。それに……。」
    アンデルセンがチラリと廊下の先を見る。
    「そこで盗み聞きをしている毒婦が何をするか分かったもんじゃないからな!文字通りマスターを胎の中に収めないよう監視が必要だろ?少なくともあれより先に退去する気はない。」
    廊下の向こうから「人聞きの悪い!」とキアラさんが出てくる。
    「私もマスターと最後の言葉を交わしたいとそう思って様子を伺っていただけですのよ?それを人を覗き呼ばわりして。」
    「事実だ。恋する少女のようないじらしさの欠片もない。蛞蝓のようにじっとりマスターを見ていたろ。」
    「まあ酷い!」
    「ところでマスター、あいつにはもう声をかけたのか?」
    「え?誰?」
    「お前のハッピーエンドの鍵だと思っているんだが、あいつぐらいなら結末を見せてもいいんじゃないか?」
    「本当に誰?」
    うーんと首を捻る。
    「本気か?あまり言うのは野暮と言うものだが、あいつは特別だったんだろ?いつもマイルーム付きにして四六時中一緒にいただろう。」
    そこでようやく気付いて固まる。
    「え?全然そういうそぶり見せたつもりなかったんだけど、……バレてた?」
    「あれで隠してるつもりだったのか?とんだ阿呆だな。思いっきり顔に出てたぞ。気付いてないのは本人ぐらいのものだろう。」
    そんなまさか…。キアラさんの方を見るとこくりと頷かれる。キアラさんも気づいていたらしい。全身が熱くなるのを感じる。
    「ち、違うの……最初は強いし頼りになるからいつも連れ回してただけで……。ただ、そのうち根は真面目なとことか意外と面倒見が良いとことか気づいて……いつの間にか。」
    「別に言い訳しなくたっていいだろう。俺は反対はしていない。…心底、趣味は悪いと思うがな!」
    「え、そうなの?絶対反対されると思って誰にも相談できなかったのに。」
    「まあ、マスターが知らないだけで暴れてるサーヴァントはいたが。」
    「そうなの!?」
    ひょっとしてわたしの知らないところで大変なことになってた?
    「少年少女の時間は短い。有限の時間を無為に消費したくなければ歩みを止めるな。思い立ったが吉日と言うだろう。あとで後悔したくなければ思うままに行動しろ。人生は待ってはくれないぞ!」
    アンデルセンにせっつかれてわたしは慌てて走り出した。

    食堂にも、シミュレーターにも、彼の部屋にもいなかった。どこに行ったのだろうとカルデア中を回り、仕方なく自分の部屋に戻る。
    「随分遅いお帰りで。」
    探し回った相手は我が物顔でわたしのベッドに腰掛けていた。
    「道満、こんなところにいたの?」
    「何か拙僧に御用でしょうか?」
    「君こそどうしてわたしの部屋に?」
    「……拙僧はただ、退去前に我が主にご挨拶をと。」
    「え、もういなくなっちゃうの?」
    道満は一瞬驚いた顔をする。
    「もう戦いも終わったのです。影ごときがいつまでも残っていたところで利用価値もないでしょう。」
    「利用なんて…。」
    わたしは道満のこと大事に思ってたのに。何一つ伝わってなかったのかな。戦いに連れて行かない日もずっと一緒にいてほしいぐらい。嫌だ、いなくならないで。他の皆とは笑って挨拶できたのに。じわりと目頭が熱くなる。
    「それとも、まだ拙僧に何か?」
    黒曜石の瞳にじっと見つめられる。
    「…君がいなくなったら、すごく寂しい。」
    涙目になっているのを気取られぬように俯きながら道満の横に座る。道満とわたしはただの主従関係で、道満からしたらわたしの気持ちなんてただの迷惑かもしれない。……言わないほうがいいかな。でも、さっきのアンデルセンの言葉を思い出す。言わないで後悔するよりは言って後悔するほうがきっといい。
    「道満、わたしは君とお別れしたくないよ。」
    膝の上で拳を強く握る。ああそうだ、聖杯の願い…やっと決まった。
    「受肉して、わたしと一緒に来て。」
    隣から息を呑む音が聞こえる。急にこんなこと言って驚かせたろうな。だってわたし達恋仲でも何でもないし、今まで道満の事好きとか本人に言った事も無かったし。恐る恐る顔を上げようとすると、わたしの手に道満の手が重ねられる。
    「ええ、貴方がそう望むのであれば。立香の行く先であらばどこへなりともお供いたします。」
    今まで見た事ないぐらい穏やかな顔がすぐ近くにあり心臓が大きく跳ねる。道満は前髪が触れるほどの距離までわたしの顔をのぞき込んでいる。
    「本当!良かった!それじゃわたし諸々の手続きがあるから!」
    ばねの様に跳び上がって立ち、そそくさと部屋を後にする。
    「(緊張した〰〰〰!!)」
    部屋を出て一息ついたところでふと気づいてしまった。

    告白してないな…?

    あれ?道満どういうつもりでついて来てくれるって言ったんだろ?
    恋人として、じゃなくて…まだ主従として?

    流石に今部屋に戻って「今の告白だったんだけど!」と言う度胸は無い。もやもやした気持ちを抱えたままゴルドルフ新所長の下へと向かう。新所長は「正気なのかね?」という顔をしたものの、道満を受肉させて一緒に暮らすことは最終的に了承してくれた。



    カルデアの英霊もほぼ全員が退去したころ、金の杯が光を放つ。
    「本当にいいんだね?」
    「立香こそ拙僧で宜しいので?」
    「ふふ、これからも宜しくね道満。」
    こうして蘆屋道満は受肉した。彼がわたしの事をどう思っているとしても、これから先の人生も彼と一緒に居られる。それだけでわたしの心は満ち足りていた。
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    たつき

    DOODLE今後出す予定のリンぐだ全年齢小説本から書き下ろしを書けてるお見せします。
    本当に短いです。
    こちらだけはイベント終了後非公開にします。

    追記
    ちょっと書き直しになったから供養がてら公開しておきます。
    本が出るときには消すかも。
    君は悪夢になり得ない 彷徨海カルデアベース。深夜1時を回った頃、眠る藤丸立香のマイルームに蠢く影があった。その大きな影はゆるゆると立香に近づき、黒ずんだ手を伸ばす。眉根を寄せて脂汗を浮かべる立香を拭うと、うっすらと笑みを浮かべて影は……蘆屋道満は何かを唱え立香の夢の中に潜っていった。
     立香は毎晩悪夢を見ていた。そのきっかけは妖精国で見せられた失意の庭だが、その不安自体はそれ以前から立香自身が抱えていたものに他ならなかった。今日も立香は夢を見る。
    「これでキミも『予備』に戻れる!」
    「もう無理に頑張らなくていいんだって」
    「事件解決後、キミの目の前に広がっているのは何もかも壊れた後の、絶望的な地球の姿だ」
     仲間達から立ち止まるよう言われる優しい悪夢。今までがむしゃらに走り続けてきた人類最後のマスターにとっては何よりも苦しい要求だった。それでも、と彼女が立ち上がれる人間であったとしても、毎夜夢に見る度に少しずつ心はすり減っていく。一度傷のついた心は決して元には戻らない。眠ること自体を敬遠するようになるも、マスターとして万全を期すためには眠らなくてはならないと言うジレンマ。ここ最近の立香がノイローゼ気味だったことに気付かない者は少なかった。
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