「こんな遅くまでモンドの平和の為に、ご苦労な事だ。闇夜の英雄殿」
「……そちらこそ、こんな夜更まで職務を忘れずに一人で街を見回るなど、騎士の鑑のような男だ」
「やめてくれ、こそばゆい。今日は旅人は不在か?」
「あんな子供を夜に連れ出して、街を回る人間に見えるか」
「いいや、とんでもない。英雄殿は品行方正であられる方だ、そんな無体は働くまい」
「……今日は、」
「何かな」
「今日はいつも以上に口がよく回る。何かあったのか」
「何も」
「あったのか。探りを入れよう」
「……んくく、俺の話、聞く気、あるのか?」
「君の信頼と虚偽の境目は五分五分だろう」
「今日は虚偽の感じだった?」
「まあ、そうだな。探りを入れたとて、本当に痛む懐なんてないだろう」
「どうかな? もしかしたら密輸、機密漏洩、違法売買なんて事も」
「嘘を吐くならもっと捏ねて飾り立ててそれっぽくしろ。つまらない」
「嘘なんて何処にあるか分からないもんだぜ」
「分かるさ、どれだけ一人で長い事やってきても、君の本質だけは見失わない。自信がある」
「…………ああ、へえ……、そう、そうか、」