つけっぱなしの居間のテレビで、正月番組の合間に天気予報が始まった。ここんとこずっと降ってた雪は今朝には降り止んで、明日の予報は快晴。
よかった。ほっとして、それから、楽しみだーって気持ちがどんどん湧いてきて、こたつの反対側に入ってるねーちゃんにバレないようにこっそり、足の先っぽのほうだけ揺らしてみる。
半月くらい前に長い冬休みが始まって、俺はねーちゃんと一緒に、ブルーベリー学園からこのスイリョクタウンに帰省してきた。
実家に着いて何日か経ったあと、俺たちと同じようにパルデアの実家に帰ってるハルトから、手紙が一通、届いた。ちょっと丸っこくてめんこい形の手書きの文字で、うちの住所と、宛名のところに俺の名前が書かれてて。ハルトってこんな字書くんだなあってなんだか新鮮な気分になりながら、できるだけきれいに封を開けてみたら、中に入ってた便箋いっぱいに、さっきのハルトの字がびっしり並んで書いてあった。丁寧な挨拶から始まって、俺やねーちゃんたちが元気でいるか、風邪ひいたりしてないか心配してくれて、ハルトがパルデアでどんな冬休みを過ごしてるのか、細かく書いてあって。『年が明けたら、スイリョクタウンに遊びに行ってもいいですか? あけましておめでとうって、スグリに会って直接言いたいです』……なんてことも、書いてあった。
急いで便箋と封筒を用意して、返事を書いた。うれしい。俺も会いたい。ねーちゃんもじーちゃんとばーちゃんたちも、みんなハルトに会えるのを楽しみにしてるから、ぜひ来てほしい。そこまで書いて、こっちは雪がすごいから気をつけて来て、って、一応付け足しておいた。ハルトがいるパルデアはキタカミよりずっとあったかくて、雪も北側の山の方でしか降らないって、ペパーたちから聞いた覚えがある。
最初はねーちゃんにスマホ借りてハルトに電話しようかとも思ったけど、考え直して、やめた。ハルトの手元にも、俺が送った手紙が残るようにしたかった。「重ッ!」って、ねーちゃんには引かれた。でも、前に俺が初めて送った手紙をずっと大事にとってあるって、ハルトが言ってくれたこと、覚えてるし。今はハルトからも手紙貰えてうれしいから、ねーちゃんに何言われたって、全然気にならない。
ハルトはすぐに返事をくれた。お正月はハルトのお母さんと一緒に過ごして、次の日に、パルデアを出発するって書いてあった。前回みたいにネモたちと一緒に、四人で遊びに行こうって話になったとか。パルデアからスイリョクタウンまで、飛行機とバスで半日くらい。……明日、ハルトたちがうちに来る。今回は早起きして、絶対、ぜったいに出迎えに行くんだ。
雪積もってるけど大丈夫かな。飛行機もバスも、止まったりしてねっかな。ハルトたち、困んないといいけど。でもハルトなら、困ったことになったって全部自分でなんとかしちまいそうだ。
ずっとスグリに会いたかったから、会えるのを楽しみにしています……って、返事の手紙に書いてあった。そこを読んだときのうれしさっていったら、もう。ご飯できたから降りてきなさいって呼ばれるまで、何回も何回も、その手紙を繰り返し読んだ。その次の日も、そのまた次の日も、届いてから毎日、ハルトの手紙ぜんぶ読んでる。
明日、来てくれる。ハルトに会える。胸の中がふわふわするのが止まんなくって、つい、顔がにやーってなってくる。
「……スグ。何ニヤニヤしてんの」
こたつの向かい側で餅食べてるねーちゃんの反応も、もう呆れ半分慣れ半分って感じだ。
「にへへへ」
今すぐハルトにぎゅーってしたい気持ちのかわりに、隣でぬくぬくしてたオオタチを抱っこして、座布団の上に転がった。いきなりぎゅーっとされたオオタチは不思議そうに頭を斜めに傾けてから、きゅう、ってひと声鳴いた。