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    非公式の二次創作。
    ※何でも許せる方のみご覧ください。
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    舞台🪵田がイケメン過ぎるため、思わず書いた。
    巻千がデートしてるだけの内容。
    🌰田が巻千サポートしてるので注意?

    ・宣誓!【巻千】🦍🐆

    「うぉお〜!千早ぁああ!!好きだ〜〜!!!」

    夕陽が差込む河原に向かって大声で叫ぶ巻田、そして俺は少し離れ他人のふりをしてスマホを弄る。

    「恥ずかしいのでやめてください」



    ことの発端は、巻田の確認から始まった。

    「なぁ千早、俺がプロになったら恋人になってくれるって言ったよな!?」

    高校三年の冬、そろそろ皆んな進路が決まる時期。巻田は栗田を連れて突然この小手指にやってきた。

    「……はい?」

    巻田が俺の前に突然やってくるのは今に始まったことではない。けれども今回は飼い主の監視がない、動物園の檻から解き放たれたゴリラの如く自由だ。

    「そうやってお前がすっとボケると思って、俺は栗田っていう生き証人を連れてきたんだからな!」
    「いつ俺が巻田と恋人になるなんて話をしたんですか?」
    「正確には、5年前かな……」

    そこで巻田と同行していた栗田が至極真面目な顔をして経緯を語り始める。

    「富士見シニアに在籍していた時だよ。練習中いつも通り巻田が千早に絡んで『プロになったら俺と付き合えよ』なんて言って、千早は適当に『分かりましたから、あっちで投球練習でもしてください』って返事してた」
    「だとしても、そんな署名も印鑑もない何年も前の口頭約束なんて無効ですよ」
    「それが、証拠に残ってるんだよね……」

    栗田は鞄から一つのスマートフォンを取り出す。それは何年も前に発売された型落ちの機種で、今となってはアップデートどころか修理にすら対応していない旧型モデル。

    「これ、当時の俺が千早のフォームを参考にするために撮影していたスマホなんだけど」

    画面をタップして一つの動画をする栗田。そこには当時の巻田と俺の姿が映っており、確かに件のやりとりがデータに残っている。

    「……俺が巻田と付き合って、栗田が何か得することあります?」
    「千早、俺はとどちより巻千が好きな腐男子なんだ……」
    「よく分かりませんが、栗田は巻田の味方ってことですか?」
    「まぁ付き合い長いからね」

    そして冒頭に戻る。かくして俺は、巻田と付き合うしか選択肢がない。

    「分かりました、付き合いましょう」
    「うぉ〜〜っ!やったぜ!!」
    「ですがスミマセン、俺には好きな人がいるので別れてください」
    「はぁ〜っっ!?」

    あまりの急展開に巻田の理解処理が追いついていない。栗田も呆気にとられている。

    「俺様と付き合ったからには、しばらく俺を好きになる努力はしろよ!」
    「しばらくって、どれくらいの期間ですか?」
    「う〜ん、三ヶ月は欲しいかな」

    何故か第三者の栗田が答える、人を好きになるにはそれくらいの期間は必要なのかもしれない。

    「女子がよく話してるよね、身体の関係を持ったら好きになっちゃった〜とかって」
    「つまり栗田は……俺に巻田と寝ろって言ってます?」
    「そりゃあ付き合ってるんだから当然するよね、寝て初めて分かることもあるんじゃないかな」
    「栗田はもう黙ってください」

    過去に俺が巻田の話を適当に流したせいで、こんなことになってしまうなんて。これほどまで過去の自分を呪ったことはない。しかし過去は変えられない。

    「千早、優しくする!」
    「はぁ?何で巻田が抱く側って勝手に決めつけてるんですか?」
    「じゃあお前、俺を抱けんのかよ?」

    答えは否。抱くよりかは抱かれる方が成功率が高いことに気付いてしまう。

    「俺が千早を抱く方がゴーリテキってやつだろ」
    「大丈夫なんですか……巻田、童貞でしょう?」
    「んな訳ねぇだろ、俺はプロにも選ばれる強豪校のレギュラーピッチャーだぞ」
    「そうなんですか?」
    「モテんだよ俺様は!」

    ドヤ顔で踏ん反りかえる巻田。しかし俺としては思うところがある。

    「……俺のことが好きなのに、他の女の子と寝たんですか?」
    「うぐ……っ」

    以前の俺に責める権利はないが、今は付き合ってるらしいので遠慮なく言わせてもらう。後ろめたい気持ちはあったのか、巻田はダメージを受けている様子。

    「へぇ、別に俺に一途って訳でもなかったんですね」
    「いや、好きなのはずっと千早だけどよ!」
    「じゃあ女の子とは遊びってことですか?酷い男ですねぇ」
    「抱いてくれって頼まれたからその通りにしただけだろ!」
    「ふぅん、気持ち良かったですか?」
    「あ〜、まぁ……」

    途端に口ごもる巻田。昔から巻田は下ネタに弱い、どうやら女性の話は苦手なようだ。

    「巨乳でした?」
    「ん〜……小さくは、なかったかもな……」
    「胸が大きいのが好みなんですか?」
    「べ、別に……」
    「ないよりかはある方がいいですよね?」
    「いや、俺は乳のデカさはマジでどうでもいい……なくていい」
    「幼女でも抱けるってことですか?」
    「いや、そうじゃねぇよ!」

    激しく首を横に振る巻田。隣で栗田は困った顔で苦笑いを浮かべている。

    「ちゃんとゴムはつけたんですよね?イヤですよ俺、性病うつされるの」
    「その辺の性教育は桐島に厳しく言われてたから問題ねぇよ、千早の時もちゃんと付けるから安心しろ」

    だからって俺が巻田に抱かれるという話の流れはどうかと思う。そしてこんな往来で話すことではない。

    「とりあえず分かりました、今日はもう帰りましょうか」
    「恋人だからな、明日もデートするぞ!」
    「巻田はプロになるんですよね、俺とデートなんてしている場合ですか?」
    「つうかむしろ今しかデートできねぇんだよ、プロになったら俺様は遠方にある球団の寮に入るからよ」

    確か巻田は複数の球団から声をかけてもらっていたと聞く、正式な選手契約を結ぶ前は所属先を明かさないつもりだろう。まぁ俺は別に口を出すつもりはないと、そろそろ駅の方へ歩き出す。

    「明日はどこへ行くんですか?」
    「デートつったら、先ずは一緒に飯だろ」

    明日について確認すると、後ろから栗田がひょこっと出てくる。

    「千早、俺が美味しいパスタが食べられるお店を予約しておくからね」
    「栗田も一緒に来るんですか?」
    「ううん、俺は二人のデートをサポートするだけだよ」
    「そうですか……」

    駅に着いたところで、巻田と栗田は俺に手を振りながら随分と機嫌が良さそうに電車へと乗り込んだ。

    「千早!また明日な!!」
    「はい、では」

    無邪気に笑う巻田を見送り、俺は『彼氏ができてしまった』と一人で帰路につく。この先、巻田と触れ合う自分を想像して目眩がした。


    翌日。
    俺は都内のオシャレなイタリアンレストランでパスタをくるくるとフォークに巻きつけていた。吹き抜けの天井、東京を一望できるガラスウォール、そして目の前にはピザを食べる巻田広伸。

    「あれから考えたんですけど……やっぱり巻田とそういうことをする覚悟が決まらなくて」
    「分かってる、栗田が勝手に言ってるだけだから気にすんな……俺にしてみりゃあ千早とこうやって一緒に飯が食えるだけでも奇跡なんだからよ」

    身体の関係を持たない交際に意味なんかあるんだろうか、これでは友達と変わらない。

    「もし、また女の子にお願いされたら抱いてあげるんですか?」
    「もうやらねぇ、今の俺には千早がいるし」
    「性欲を発散したくなったらどうするんです?」
    「栗田が集めた千早の動画がけっこうあるから、それ見て一人でシコってる」
    「何ですかそれ、勝手に俺を撮ったりしてませんよね?」
    「ちげぇよ、公式試合の切り抜きとか……」
    「そんなんでよく抜けますね?」

    どんだけ俺のことが好きなんだと笑えてくる。俺の何が巻田を駆り立てるんだろう。

    「お腹いっぱいになりました?」
    「おう」
    「それじゃあ、お店を出ますか」

    会計はきっちり割り勘にしようと言ったが、巻田は『俺はもうプロになるから』と主張して俺に財布を出させることすら拒んだ。店員さんを待たせる訳にもいかず、その場は巻田に支払いを任せる。

    「ごちそうさまです、この後どうしますか?」
    「いいか千早……初めてのデートってのは、一緒に飯を食った後に少し歩いて、別れ際に軽くハグするのが決まりなんだぞ」
    「誰が決めたんですか、そんなの」
    「栗田が言ってた」

    栗田がいつのまに恋愛マスターになったのかは疑問だが、デートの流れを決めつけるのは良くないと思う。

    「少し歩くんですか?」
    「せっかく地元に寄ったからよ、富士見シニア覗きに行かね?」
    「今日は練習お休みですよ」
    「あれから建物が改装してねぇのか見に行こうぜ、俺と千早のデートコースには最適な場所だろ」

    俺と巻田は地元が近いからこそ同じシニアのチームで出会っている。今日だって巻田は実家から俺のマンション付近まで徒歩で待ち合わせ場所にやって来たらしい。

    「やっぱりデートなんですか、これ」
    「付き合ってる二人が一緒にでかけたら、それはもうデートだろ」

    5年ぶりに足を運んだ富士見シニアの球場は、備品のマイナーチェンジこそあれど様変わりした外観はない。

    「あ〜、全く変わってねぇな……」
    「そうですか?ネットもベンチも色が変わって新しくなってますけど」

    俺にとっては5年ぶりだけど、巻田にとっては3年ぶりだ。きっと俺が不在にしている2年間でネットもベンチも新品に変わったんだろう。

    「俺は富士見シニアで千早と一緒にする野球が一番大好きだった!」
    「それは……どんな口説き文句よりグッとくる告白ですね」

    フェンスに寄りかかりながら巻田は俺を見つめている。改めて見ると巻田はけして不細工ではない、野球選手としては顔が整っているほうだ。

    「なぁ千早、もし俺がメジャーに行ったら結婚してくれ!外国なら同性でもできっからよ!」
    「気が早いですよ、まだ交際して1日しか経っていません」

    まさかのプロポーズに対して俺は冷静に返す。
    巻田のすごいところは俺への情熱を野球で昇華させるところだ。

    「うぉお〜!千早ぁああ!!好きだ〜〜!!!」

    俺への好きが溢れた時に容赦なく叫ぶ巻田。ゴリラのドラミングみたいなものだ。

    「近所迷惑ですのでやめてください」

    数年後『俺も好きですよ』と巻田に返す日がくるなんて、この時の俺はまだ知らないのだった。


    【いったん終わり。】
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