窓の外にちらちらと降る雪を眺めながら、ロドス製薬会社のドクターは静かに話し出した。
「君は他人にも自分にも、厳しすぎるんじゃないかな」
「私が、か?」
フードを目深に被ったドクターは、組んでいた手を握り直して、私を見上げて頷く。
すっと交わった視線は、静かにチェスの盤上へと落ちる。
ドクターの勝利で終えた盤越しにいる彼のフード奥に潜んでいる目を私は離せないでいた。伏せられた睫毛は存外と長い。そう分かるほどの近さで顔をあわせた事がなかったからと言い訳しながら溢れる好奇心を抑えつける。
「そう。自分に甘く、他人に厳しいひとを良く見るけど、君はすべてに厳しい。少しくらい甘くしても良いと思うのだけど」
「…寛容さを持てと、そう言いたいのか」
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