手繰りよせる心「はあい、じゃあこれアンナさんからのオマケ!」
馴染みの商人から手渡された小袋をつまみ上げ、シャミアは怪訝な顔をした。手のひらに収まるほどのサイズで、植物の種を小分けにする様な布袋だが、それにしてはやけにきめが細かく小綺麗な布が使われている。
布には小さく赤い薔薇の刺繍がされ、贈り物として仕立てられているように見えた。袋の中から微かにする香りは甘いが、果実とも違う嗅ぎ慣れないものが混じっている。
職業柄、僅かな時間で危険物かそうでないかを判断する。シャミアはアンナに問うた。
「なんだ、これは」
「アドラステアから到着したばかりのお菓子よ。今帝都では焼き菓子よりも断然人気らしいの」
「悪いが甘いものは好かないんだ。誰か他の奴に譲ってやってくれ。食べ物に目が無い生徒となんていくらでもいるだろう」
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