ケモノガリマイヅルが部屋の障子を開けたとき、シュローこと俊朗は文机の前で手紙を読んでいた。
この国の紙と違う質感のそれは、きっと遠い国の友からだろう。
柔らかい表情で、時折困ったように眉をハの字にしてクスクス笑う様は、旅の前には見られなかった表情だ。
あの旅を経て、いや、あの稚拙な喧嘩を経て、俊朗は変わった。当主になって日が浅く、まだまだ成長の余地はあるものの、どことなく今までになかった自信を持ち、当主にふさわしい堂々とした佇まいとなった。
「ああ、マイヅルか。どうした。」
「失礼致します。主上より文が届いております。」
大名からの文を届ける。
俊朗はご苦労、と礼を言って受け取り、書状を開いた。
書状を一読すると、みるみるその顔が冷えていく。
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