ゼロの世界へようこそ side:ホロウレイダーの少年ティナリからのプロポーズをそこそこ、俺は部屋を飛び出した。目的地に向かう道すがら、目尻に浮いた涙を拭う。さっきはちゃんと普段通りに振舞えていたかな。
俺らしくない。愛する人からの気持ちに応えられないことなんて、分かり切っていたはずなのに。俺の生き別れの妹がこの姿を見たら驚くだろう。「どうしたの空、そんな情けない顔は初めて見たよ」って。
俺はこの世界に来てから、随分と弱くなってしまったみたいだ。
俺の名前は空。妹の名前は蛍。それ以上の身の上はなく、俺と妹は『世界』を旅し転々とする旅人だった。しかし、この世界を訪れてしばらくしたころ、ホロウを発端とした大災害に見舞われ、妹とは離れ離れになった。以来ずっと俺は妹を探し続けている。各地に発生するホロウを調査して、ついでにホロウレイダーとして依頼をこなし生活する日々だ。
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