「慎、どうした?」
学校から合宿施設に移動中。慎はぼんやり空を眺めながら歩いていた。このまま歩き続けると躓きそうだ。
声をかけるとすぐにこちらへ顔を向けてちょっと困ったように笑う。
「この前、空飛べなかったなぁ、って寂しくなっちゃって」
この前。思い当たるのはお正月。慎は浅桐さん特製の飛行機械を背負い、飛ぶはずだった。だけどそれを阻むものがいた。そう、あの日飛んだのは慎ではなく獅子舞。
「あれな〜。しっちゃかめっちゃかだったもんな」
「うん、だから仕方ないんだけどね」
「んー、じゃあ今度の日曜日、広場に集合しようぜ!」
「え?」
「リベンジ、しよう」
昔の俺ならやめとけって言っていたかもしれない。でも今は慎の強さを知っている。
「浅桐さんも戸上さんも呼ぼう! なんだか今から楽しみになってきたわ」
ぽやっとした慎の表情がどんどんと柔らかくなる。
「うん、良くんありがとう」
「うっし、そうと決まれば急いで合宿所いくか! 指揮官さんも誘おう!」
日曜日、晴れるといいな。