『我慢強いあの人の誕生日』京都の六月は、初夏の風が気持ちええ季節や。光ちゃんの誕生日、六月五日。私は朝からウキウキで、紙袋には丁寧にラッピングしたプレゼントと、手作りケーキの箱を握りしめてた。光ちゃんの喜ぶ顔を想像したら、胸がドキドキしてたまらん。
「光ちゃん、びっくりしてくれるかなぁ」
私はひとりごちながら、京都伏見高校の自転車競技部の部室近くで待機。放課後、光ちゃんが練習終わりに出てくるのを待つ作戦や。
しばらくして、部室のドアがガラッと開く。汗と笑顔がまぶしい光ちゃんが、ジャージ姿で現れた。6月の陽気やのに、なんか爽やかさが光ちゃんには似合う。
「お、○○ちゃん! なんや、こんなとこで待っとるなんて珍しいな」
光ちゃんの声は、いつ聞いても柔らかくて耳に心地いい。ちょっと照れたような笑顔に、私の心臓はまたドキッと鳴る。
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