甘い視線甘い視線
今思えば、あの子達は明らかに友達のそれではなかった。それでも当時のクラスメイト達は多分気づいていなかった。否、気付いていたとしても気を使って言わなかったのだろう。あの2人の密かな甘い関係について
最初に違和感を覚えたのは進級したての頃、新しいクラスでは仲の良い子と別れてしまって、初対面の人が殆ど、知り合いがちらほら居るかな、程度だ。多分みんなそんな感じだったと思う。その証拠に休み時間や放課後になってもガヤガヤとした雰囲気はなく、いつも静まり返っていた。
そんなクラスで、2人だけとても仲の良さそうな子達がいた。2人共顔立ちが整っていた為すぐに名前と顔を覚えた。ラスティカとクロエ、あの2人は所謂幼馴染のようで、周りから見ても親友のように思えた。
その後、社交的な性格の2人はどんどんと友人を増やしていった。2人が友人と接していく様子をなんとなくチラリと盗み見ていく内に幼馴染を見る目とは明らかに違うな…と本当になんとはなしに思った。どう違うのか綺麗に言語化して伝える事が出来ないのが悔しく、己の語彙力を恨む。なんと言えば良いのだろう、お互いが幼馴染を見る目には、砂糖のような甘さが含まれている様な気がした。町中で見かけるカップルの様な目、新婚夫婦の方が近いだろうか、まあそんな感じの目線を向けていた。
最初はそんな感じの疑問から始まったと思う。確信に変わり始めたのは秋頃で、みんなすっかり仲良くなった頃。その時、私含めた女子7,8人程の女子会で開催されたのはよくありがちな話題、恋バナだった。最初は好きなタイプ、己の彼や片思いしている先輩の話、後半になるとクラスメイトで付き合うならという話題で、アイツはファッションセンスがない、アイツは性格が悪い、アイツは将来不安定そう。というような偏見が大部分を占める辛口評価がクラスの男子に付けられていった。この手の話をすると自分が選べる程の立場であると錯覚してしまうので嫌いな人は嫌いだと思う。そして、クロエの番になった。教室にクロエ本人も居たが、そんな事はエスカレートしていった彼女等には関係ない。
「クロエは顔が格好良いよね、ファッションセンスも良いし、多分生活力高いタイプ」
「あ~今までで1番ありかも」
クロエの評価は高評価で、夫にしたいというような声も上がっていた。
そんな感じで盛り上がっている最中、1つの足音がこちらに向かってくる、クロエ本人が居る中で話していた為、気を悪くさせてしまっただろうか、そう考え振り向くと予想とは違い、クロエではなくラスティカがこちらに向かってきていた。そして衝撃の言葉を発する。
「ごめんね、クロエは僕のなんだ」
その場にいた誰もが口をあんぐりと開けて呆然としていた、言った本人はのほほんとにこやかに笑って少し赤くなっているクロエと共に教室から去っていった。
その時私は確信してしまった、そして妙に納得する。あの甘い視線の意味はそういう事なんだ、と。
私の勘はあまり外れていなかったようだ。