さよならだけならいくらでも 3 朝が来る度にまた生き延びてしまったと思う。
ずっと夜ならいいのに。
ああでも夜もすきじゃないんだった。
眠れない夜と夢見の悪い夜は特に。
けれどここで過ごす夜は眠りが浅いことも夢見が悪いこともない。
だからだろうか。
ここで迎える朝は嫌いじゃない。
少なくとも、生き延びてしまったなんて思ったりしない程度には。
ソファにぼんやり座っているとそのまままたうとうとと意識が溶け出していってしまいそうになる。
それをなんとか堪えようとアベンチュリンは天井を仰ぐ。
もうすっかり自分の家のように……とまではいかなくともここにいることにそれなりに馴染んできているのは否めない。
テーブルの上には飲みかけの珈琲が入ったマグカップがひとつ残されている。熱いものはどうにも得意になれないままだ。
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