【ルドハル】音が教えてくれるもの 心地よい音色。
紡がれる旋律。
澄んだ音は、まるで踊るように弾み、躊躇いもなく続いていた。
「ふふ……。見事ですね、ハルリットさん」
「本当に。特技とは言っていたけど、へぇ〜。こんなに上手いと思わなかったな」
旅の途中、マロンクリーム王国のはずれにある古城にレッドブーケの騎士たちは滞在していた。
城の近くまで来たのはまだ日が傾く前だった。城の主であるこの地方の領主にロマリシュが顔を見せに行くと、この先を進んだ山間の村はこの時期は皆で出稼ぎに出ていて、住人がほぼいないと教えてくれた。夜に休める場所もないかも知れないとのことで、今夜はこの城で泊まってはどうかと打診してくれたのだ。
夕飯にはまだだいぶ早かったので、領主がお茶に誘ってくれた。皆で話している間にピアノがあることを知ったハルリットが、自分の特技だと笑顔で言うので、領主も喜んでいた。
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