月下 第65回お題 【月下】
キン、と刀を鞘に納める音。ごろん、と鬼の首が落ちる音。
ひらりと月下に舞い降りる、稲妻のような、一閃の煌めきのような人。
滴る血で前がよく見えない。ただ、それは美しかった。
「大丈夫?」
控えめな声で振り返り、竈門炭治郎に手を伸ばしたのは美しい人だった。
下弦とはいえ十二鬼月と初めて刃を交え、その強さに刀を折られて力尽きて妹の上に倒れた炭治郎は、返事もままならない。
けれど、もう一人の美しい女性に妹を殺されそうになって逃げ出した。
逃げろ、と指示されたからだ。動けなくても動け、という、なんとも無茶苦茶な指示を出したのは恩人の冨岡義勇。
あとから聞いた話だと、兄弟子は水柱という鬼殺隊最高位にいる人であったらしい。
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