スランプさえもひだまりだと【上】もう3日経った。もう3日ユキとのラビチャに既読がつかないのだ。
今週は俺のドラマ撮影に合わせて、ユキは作曲期間になっている。作業に集中しているのだろう。しかしながら消えてしまったのではないか、死んでしまったのではないか、なんて撮影中も不穏な気持ちが自分の心に宿っていき、正直全てを投げ出したくなるほど不安だった。今までの詰め込み期間ですら、こんなに連絡が取れなかったのは初めてだったから。
きっと作曲に追い込まれて、携帯の充電を入れていないのだろう。それは予想できた。同じ予想をしたおかりんが電気メーターの数字は動いているから一応大丈夫だろうと言っていた。
もし明日になっても連絡が取れなかったら強行突破で合鍵を使って入るそう。「いやあ、それ今日もうやっちゃおうよ。」そう言うものの俺もおかりんもユキの作業の邪魔をしたくないのがどこかにあって。
まだかろうじて生きているのなら30手前の男が、ご飯を食べ忘れてうっかり餓死なんてこともないだろ、う…。うーん。信じて安心できないのは相方失格だろうか。「いや、ユキなら全然あるんだよな。」そうおかりんに言うとですよねぇ。自分も千くんに関しては健康管理等は信頼していないです。そう言ったのだ。
それから数時間後、俺は今日分の撮影が終わり、俺はユキのアパートまで車を走らせる。良かった。今日は道路があまり混んでいなくて。すっかり日も暮れて、ネオンが照らしている。
ユキから貰った合鍵で鍵をこじ開けた。いつもと変わらない部屋だ。玄関にはユキのお気に入りの靴もあった。
それなのにリビングにユキの気配がしなかった。…俺は途端に不安感に襲われる。リビングの窓も不用心に開けてあった。…消えてしまったのか?そう不安感が心臓を押さえつける。…ユキもかつてこんな気持ちだったのか。バンさんが消えた日、アパートに置いてあった手紙を見てユキが感じた気持ちは、こんなにも苦しく切ない気持ちに襲われたのか。
俺はハッとした。俺は違う。ちゃんとユキは存在している。今日もしっかり作曲部屋にこもっていた。かちゃかちゃと音がしたから。その音が妙に安心して愛おしくなった。
「ユキさんや〜。」そう部屋のドアを開ければ、ユキは机に伏していた。
ゴクリ。唾を飲み込み