心で感じる甘さその日は四次元魔界中に朝から甘い香りが漂っていた。
鈍い自分の鼻にすら届くくらいの甘ったるさに一体何事だろうとゼットは不思議に思いながら目を覚ます。
取り敢えず起きるかとベッドから降りて身支度を整えていると数回、控えめなノック音が鳴らされた。そのノックの鳴らし方だけで誰が来たのか察知したゼットは素早く身綺麗にすると上機嫌でドアを開けた。
「あ、にいたんおはようなの!」
「おはよう、ビーコ。今から朝ごはんだよな?一緒に行こうな」
「う、うん。そうなんだけど、ええっとね……」
ビーコはもじもじと何か言いたそうにする。これは珍しい、どうしたのだろうと次の言葉を待つとビーコは手に提げていた紙袋から小さくも可愛らしい箱を差し出した。
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