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    ヨモギ

    @yomogibl

    松をあげる垢。24多めの予定。

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    ヨモギ

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    『風と来たりし猫の恋』展示小説その3です!パスワードは『旅日記に君をのせて』でした!

    グラいちオムニバス第参話 純情 今日も今日とてグラサン風来坊、松野カラ松は旅を続けていた。目的などない。目的など存在しないのが旅なのだ。日々旅に生き、旅を住処とする。カラ松は新たに入ったこの町が気に入っていた。欧風でレンガ造りの建物が郷愁を生み出している。建物に関心を寄せていると、向かいの喫茶店から悲鳴が聞こえた。
    「誰かっ!泥棒だー!」
    カラ松はすぐに振り向き辺りを確認する。焦る店員の視線を追うと、なるほど。一人慌ただしく駆けていく者が見えた。カラ松もすぐさま駆け出す。泥棒は足には自信があったらしいが、場数ではカラ松に到底敵わない。あっという間に差が縮まり、泥棒はカラ松に捕らえられた。
    「離せっ!クソが!」
    「クソはどっちだ?盗んだ物を返すんだ」
    「このやろっ」
    そうこうしているうちに警察がやって来たので、カラ松は泥棒を引き渡した。再び歩き出そうとすると、喫茶店の店員が声をかけてきた。
    「泥棒を捕まえてくださってありがとうございます!よければうちのコーヒーをご馳走させてください!」
    これも何かの縁だ。カラ松は言われるがまま店員についていくことにした。



     ブラックコーヒーをちびちび飲んでいる間、店員はずっと話していた。その店員はトド松といった。話は泥棒を捕まえたことの感謝から始まり、今は窃盗被害の愚痴に移っていた。
    「それで聞いてくださいよ!最近そこかしこで盗みが起こってて、ボクの店は運よくカラ松さんに助けられたからよかったものの、泥棒が怖くって休業しちゃったお店もあるんですよ~……コーヒー豆とクッキー、本当に助かりました」
    「あのくらい何てことないさ。それよりもこの町はそんなに治安が悪いのか?」
    トド松は首を横に振った。
    「全っ然!むしろ良い方だったんですよちょっと前までは!なんか流行っちゃってるんですよね泥棒が……パープルのせいで」
    「パープル?」
    カラ松は首を傾げた。カップの中のコーヒーは半分ほど無くなっていた。
    「あれ、カラ松さん知らない?マジか……パープルっていうのは大怪盗の名前ですよ、ほら見て!」
    トド松が新聞を引っ張り出す。そこには『怪盗パープル 堂々の犯行』『怪盗パープルの被害相次ぐ』『世紀の大怪盗 怪盗パープル』といった文字が躍っていた。カラ松は思わず顔をしかめる。新聞によるとパープルは何度も犯行に成功しているのに、警察はその尻尾すら掴めていないらしい。これはオレの出番だろうか。カラ松は新聞のぼけた写真を睨んだ。上の方からトド松の声が聞こえる。
    「お、もしかしてカラ松さん気になっちゃいました?じゃあそんなカラ松さんにビッグニュース!」
    トド松がカラ松の座るカウンターに何やらカードを置いた。紫のカードで、真ん中には猫が描かれている。
    「ふふ、すごいでしょ?これね、パープルの予告状。今夜美術館に来るんだって」
    「なんだと?」
    トド松は得意げに人差し指を立てた。
    「ボクの知り合いに警察の人がいて、そこに送られてきたものみたい。まあこれはレプリカなんですけどね」
    カラ松は予告状を見つめていた。もし自分がこの怪盗を捕まえれば、この町の窃盗も減るのではないか。
    「つまり今夜美術館に行けばパープルに会えるんだな?」
    「そうですよ、今までパープルが予告を欺いたことはないので」
    「そうか……」
    「ん?カラ松さんどしたの?」
    カラ松はサングラスを押し上げた。
    「捕まえる」
    「は?パープルを?」
    「ああ」
    トド松があり得ないようなものを見る目でカラ松を見た。
    「え、ちょっと待って本気で言ってる!?警察が束になってかかっても勝てない相手なんだよ?ねえ馬鹿なのお前!?あお前って言っちゃったごめんね!?」
    カラ松はコーヒーを飲み干してゆっくりと立ち上がった。
    「オレは本気だ。行ってくるぜトッティ。必ずパープルをこの手で捕まえてみせる」
    カラ松はひらりと身を翻し店を後にした。
    「え噓でしょ行っちゃったよ!?てかトッティって何?イッタいねえ……」



     満月が昇る夜、カラ松は美術館の屋根の上で佇んでいた。そよそよと吹く風が肌に心地よい。そらには雲一つない。この町は星がよく見える。
    「ん……?」
    数多輝く星の中、何かこちらへ向かってくる影があった。だんだんと大きくなってくる。カラ松は刀に手をかけた。影がカラ松の数メートル先に止まった。影がカラ松の方を向いた。短めのシルクハットに左目には彫刻のような飾りをつけている。すました顔でカラ松を見ていた。が、すぐに満面の笑みを浮かべた。
    「来たかグラサン風来坊!」
    「……オレを知っているのか。話が早いな、パープル」
    カラ松は刀を抜いた。パープルが駆け寄ってきた。迷わずカラ松も斬りかかる。しかし怪盗は軽々と避けた。負けじと追撃するが、マントを切ることすらできない。パープルは猫のようなしなやかさで次々と来る攻撃を交わしている。決してカラ松が鈍いのではない。パープルの動きが予測不能すぎるのだ。カラ松が大きく踏み込んだその時、パープルがカラ松の肩を抱いた。しまった、と思っても後の祭りだ。カラ松の口元に白い布が当てられた。
    「ごめん。おれ、正面衝突は苦手なんだよね」
    風来坊の刀が手からするりと落ちた。



     何も、聞こえない。だんだんと意識が覚醒していくのが分かった。カラ松はうっすらと目を開ける。眩しかった。どうやらサングラスをかけていないようだ。視線の先には白い天井があった。何だここは。見覚えがない。視線を動かすと木目調の棚があった。猫のぬいぐるみや煮干しが丁寧に並べられている。カラ松は体を起こそうとしたが、手が動かなかった。足もだ。見るとそれぞれベッドの柵に手錠で繋がれていた。試しに右腕を引いてみる。ちょっとやそっとの力じゃ手錠は壊れそうになかった。カチャ、カチャという音が部屋に響く。何分経っただろうか、どこからか扉の音がしてパープルが入ってきた。美術館で会った時の衣装ではなく、紫色のスウェットに身を包んでいる。
    「あ、起きた」
    嬉しそうに呟くとパープルはカラ松に乗った。カラ松は驚くも抵抗することができない。
    「ねえグラサン風来坊、おれのこと抱いてよ」
    「は?」
    パープルの瞳は恋する乙女のそれになっていた。



     パープル曰く、一目ぼれだったらしい。三か月前のこと、町でヤンキーを成敗するグラサン風来坊を見かけたのだ。その強さ、孤高さに惹かれたのだとか。それからのパープルの行動は早かった。元々怪盗の家系だったパープルは、幼い頃から盗みのスキルを身に着けてきた。成人してから使うことはなかったものの、そのひとつひとつが体に染みついていた。パープルの計画はこうだ。グラサン風来坊が訪れる町に先回りして、そこで盗みを働く。盗む物は正義感の強いグラサン風来坊のために厳選した。かつての持ち主が盗まれた高級品。盗んだ物は元の持ち主、またはその遺族に匿名で返還する。盗みを続けていればいつかグラサン風来坊が自分の元へ来るかもしれない。そんな淡い期待を抱き、パープルは日々『仕事』に励んでいた。しかし、問題が一つあった。誰もパープルに気づかないのだ。パープルは目立つことが大の苦手で、予告状も出さず隠密に行動していた。そのせいか、全く噂にならない。仕方なく予告状を作り送ってみたところ、ようやく人々がパープルに気づき始めた。正直、怖かった。怪盗の時は左目を隠しているが、昼間町を歩いていると正体がばれそうでひやひやしていた。視線に刺される心地がした。それでもグラサン風来坊に会いたい気持ちを抑えることはできなかった。あの視線に射止められてしまったら自分はどうなってしまうだろう。それと同時に自分もグラサン風来坊に思い出を刻みつけたいという思いが湧き上がってきた。そんじょそこらのこそ泥なんかと一緒にしないでほしい。彼にとっての特別になりたい。そうして思いついたのが体の関係を持つことだった。一夜の逢瀬を交わせばきっと二人にとって忘れられない思い出となる。今までパープルに交際関係はない。パープルは初恋に完全に舞い上がっていた。



     「ね、いいでしょ?グラサン風来坊……」
    パープルがカラ松の着物に手をかけた。その時、金属音がしてカラ松が起き上がる。
    「駄目だ。いいはずないだろ」
    「え……?」
    パープルは混乱していた。カラ松にかけた手錠はかなり硬いものだ。そう簡単に人間が壊せるはずがない。しかし実際、手錠は視力検査の環のようになって床に落ちていた。さらに混乱を極めたのがもう一つ。実はパープルはカラ松が誘いを断るとは微塵も思っていなかったのである。手錠をかけていたのは斬りかかられるのを防ぐためだ。カラ松は続ける。
    「大体何故いけると思ったんだ?……ああ、性別の話ではないぞ。それよりももっと前提の話だ。お前はオレを知っていたのかもしれないが、オレにとっては美術館での戦いが初めての出会いだったぞ?流石に初対面の人間に抱けと言われてもな……。悪いがオレは愛する者しか抱かないのでな」
    「本当に?」
    「何故ここで嘘をつく必要があるんだ。パープル。よく聞け。そもそも夜の営みは愛し合った者達が行うものなんだ。その暖かな手に触れるところから始まった儚い恋が大成する時、オレは本物の愛に触れる……」
    「そうか……そうかよ」
    パープルは俯いていた。しきりに歯ぎしりが聞こえる。カラ松は身構えた。今の状況では襲われても対応する術がない。手の枷は壊せたが足はまだだ。刀はご丁寧にどこかに仕舞われてしまった。その時、パープルの咆哮が聞こえた。



     「なんで、なんでだよおっ……」
    パープルは泣いていた。それも大粒の涙をぼろぼろと零して。
    「ぼくっ……がんばったのにぃ、なんでだいてくれないんだよぉっ!いままで、怪盗なんて、やったことなかったのに、よこくじょ、だって、ほんとはつくりたくなかったのに、」
    カラ松はばれないように目を反らした。行ったことが元の持ち主に返しただけと知ってしまった今、もう怪盗パープルはただの青年になっていた。何より自分がパープルを泣かせてしまったという事実が、辛い。
    「ぜんぶ、ぐあさんふうらいぼ、にあうためにがんばったのに、なんで、なんで、」
    元来パープルは自由気ままに暮らしていた。しかしグラサン風来坊に出会ってから文字通り世界が一変した。毎日毎日調査漬けで、夜に犯行に及ぶため昼夜が逆転した。パープルがある程度認知されてからは、あと一歩のところで捕まりそうになったこともあった。それでもグラサン風来坊のことを思えば立ち上がることができた。それが無くなってしまった今、パープルの心はぽっきりと折れた。まだパープルは涙を流している。哀れに思ったカラ松はその涙をそっと拭った。
    「……」
    パープルがカラ松を見つめる。泣いていたせいで声は掠れ、目は腫れていた。
    「ほんとに、だめ?」
    カラ松の良心が揺らぐ。目の前でうるうるしている青年は本当に自分のことを思ってくれていたのだ。一度くらい抱いてやってもいいのではないかという思いが頭をよぎる。しかしそれはカラ松の信条に反する。そしてとてもパープルには言えないが、カラ松にはそういった経験がないのだ。この様子だとおそらくパープルもそうだろう。男女のそれもあまり詳しくないし、同性なんて以ての外だ。己の無知がパープルを傷つけてしまうかもしれない。そのことがたまらなく怖かった。カラ松は思考を巡らせる。どうすれば良いだろうか。その間もパープルはカラ松のことを見つめていた。何を考えているのだろうか、パープルは口をもごもごさせていた。カラ松が指を鳴らす。
    「なあパープル、賭けをしないか?」
    「賭け?」
    パープルは首を傾げた。
    「ああ。これからオレは再び旅に出る。そこでだ。もしもオレ達が再び巡り会ったその時!オレがパープルのことを覚えていたら恋人になろう!」
    「ほんと?」
    パープルは目を輝かせた。願ってもないチャンスだ。何よりパープルには自信があった。この三か月でカラ松の行動パターンにはある程度目星がある。旅に出たカラ松を追いかければ何も難しくない。もう付き合えたも同然だ。
    「それで、この賭けに乗るか?」
    「勿論!」
    パープルは元気よく返事をした。カラ松はパープルの頭を撫で、「少し降りてくれないか?」と優しく言った。本当はずっと乗っていたかったが、仕方なくパープルはベッドから降りた。その瞬間、再び金属音がした。振り返ると、カラ松の手足が自由になっていた。首を回して、カラ松もベッドを降りる。
    「ところでパープル、オレのサングラスと刀はどこだ?」
    「あ、隣の部屋にあるから取ってくる」
    パープルが部屋を後にする。あまり経たずにパープルが戻ってきた。刀を抱えるためか、サングラスはかけている。カラ松はパープルからサングラスと刀を受け取った。刹那、サングラスに違和感があったが、気にしないことにした。
    「それじゃあ、オレは行くな」
    「……うん」
    カラ松は部屋を出ようとした。その時、ぐい、と後ろに引っ張られ、何か柔らかいものが唇に触れた。至近距離に目を閉じたパープルが見える。キス、している。初めての感触だった。ふにふにしていて、少しかさついたパープルの唇。触れるだけの、優しいキス。まるでこちらから力を入れたら壊れてしまいそう。パープルの頬は真っ赤に染まっていた。唇が離されると、パープルは視線を反らした。
    「次会うまで忘れないためのおまじない。……おれのファースト……キス、だから」
    気づけばカラ松も赤面していた。初めての、キス。そこには全てを凌駕する何かがあった。恋人ができたことも、ましてや誰かと手をつないだこともない。柔らかな感触がいつまでもカラ松の頭を支配していた。もう一度、味わいたい。あの魅惑の果実を。しかしカラ松は心の中で首を振った。駄目だ。今のオレはパープルを愛しく思ったんじゃない。ただ情欲に溺れそうになっただけだ。湧き上がる感情を必死で飲み込む。カラ松はパープルに背中を向けた。
    「そろそろお暇しよう」
    ようやく部屋を出る。刹那、パープルが声を上げた。
    「っおれ!パープルじゃなくて、……一松」
    カラ松は思わず振り向いた。一松は顔を真っ赤に染めている。カラ松はゆっくりとサングラスを外した。
    「名乗られたらこちらも名乗るのが義だな……オレはカラ松だ」
    「カラ、松?」
    カラ松はゆっくりと頷き部屋を後にした。その場には初恋を奪われた怪盗だけが残った。



     「ふふ、やった……!」
    一人部屋の中、一松は手のひらにサングラスを乗せていた。憧れだったカラ松のサングラス。あの時カラ松に渡したのは一松が用意したものだった。少しだけ傷のついたサングラスに一松はそっと口づけをする。またいつか会える日を楽しみに、一松は眠りについた。
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    ヨモギ

    DONE『風と来たりし猫の恋』展示小説その4です!パスワードは『旅日記に君をのせて』でした!
    グラいちオムニバス第肆話 戦姫 暖かい風が吹いていた。まるで何かのアニメのコスプレのような古風な格好の男は、大きく息を吸った。
    「春だな……」
    優しい日の光を浴びて男、カラ松の顔は思わずほころんだ。こんな天気の日は気分が良い。近くの和菓子屋で団子でも買おうかと思ったその時、カラ松の前に何かが立ち塞がった。人ではない。カラ松の三倍くらいの大きさをした、何か。一つ目でこちらを睨んでいる。ドブのような色で鼻をつく臭いがする。思わず後ずさる。何だこの化け物は。化け物が歩いた後にはヘドロのようなどろどろした何かが湯気を立てて残っていた。背中に壁が当たる。しまった。もう逃げ場が。化け物が迫る。オレの旅もここまでか。これまでの思い出が蘇る。道を間違え正反対の方角へ歩いたこと。何もない所でバランスを崩し、かなり派手に転んだこと。『あなたに心奪われました』と言われ……たことは無かった。カラ松の旅先の子は皆内気だったのだろう。様々な思い出が走馬灯となって流れていく。不思議と後悔は湧かなかった。ただ今は、流れゆく記憶の欠片に思いをはせていた。あの世とは、どんな所なのだろうか。悪人はいるのだろうか。化け物がカラ松のすぐ側まで来た。カラ松は何も抵抗しなかった。化け物の頭部だけがずる、と伸びてくる。恐怖はもう無かった。カラ松が手を伸ばす。その時だった。
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    ヨモギ

    DONE『風と来たりし猫の恋』展示小説その2です!パスワードは『旅日記に君をのせて』でした!
    グラいちオムニバス第弐話 歯車 日が昇る前から出勤して、サービス残業は当たり前。社食は硬いパンと薄いスープ。作業員には何を作っているのか知らせず、就職したら最後、骨になるまで利用される。そんな悪しき噂が後を絶たない工場、ブラック工場にグラサン風来坊は来ていた。外見から黒々としていて、名実ともにブラック工場であることを隠そうともしていなかった。あまりの黒さにグラサン風来坊―カラ松はサングラスを外した。一筋の月明りだけが彼を照らしていた。幸い警備は薄いようで、まるで駅に入るみたいに自然と建物の中に入ることができた。建物の中は暗かった。機械の錆と油の臭いが鼻につく。入ってすぐに案内図があったが、真っ黒で何も読めなかった。他の看板も黒く、手探りで向かうしかなさそうだ。工場の中は思ったよりも広かった。地下に通じる階段を下りる。臭いがさらに強くなった。あまりの異臭にカラ松は口元をいつもマントのようになびかせている布で覆った。暗闇にようやく目が慣れてきた。相変わらず道案内の役割を果たすはずの看板は、真っ黒。辺りを見回すと、ほんのりと明かりが漏れ出している部屋があった。部屋のプレートも真っ黒で読めない。思い切って扉を開けてみるとそこはこれまでカラ松が見てきたブラック工場とは似つかわしくない光景が溢れていた。まずはその明るさだ。おそらく一般的な照明のそれと変わりないのだろうが、目が暗闇に慣れたせいでかなり眩しい。カラ松はサングラスをかけた。やはり机やソファといった家具は黒いが、所々にフィギュアや金庫で別の色があるのを見つけた。そして部屋の奥、人影があった。カラ松は声をかける。
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