グラいちオムニバス第陸話 難敵 草木も眠る丑三つ時。町外れの廃ビルが何やら騒がしかった。建物の中では男が二人、睨み合っている。片方は坊主頭にサングラス、和服といった格好で刀を構えている。もう片方は全身を白のスーツに包み頭にも真っ白な帽子を被っている。坊主頭が刀を鞘から出した途端、白スーツが銃を撃った。パン、パンッとテンポよく放たれたそれは、坊主頭の刀によって斬られた。白スーツはくつくつと笑い声をあげる。
「相も変わらず鋭い刀だなあ、カラマツ?」
対するカラマツ―カラ松もサングラスの奥で笑った。
「そっちこそ、ちっとも落ちぶれていないじゃないか、一松」
実はこの二人は、これまでに何度もエンカウントし、その度に激しい戦いを繰り広げてきた。しかし、互いに命を狙っているわけではない。いつからだったか、もう戦いが出会った時のお約束のようになっていたのだ。
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