カフェデート セイジとのふたりの間には、お互いが頼んだカフェラテと、このカフェ自慢のものらしい固めのプリンが並んでいる。
「ふたりはカフェラテみたいな関係、みたいなのってあるじゃん?」
「ん? なんかの曲の歌詞?」
「そんな感じの。恋人同士の関係を表すやつ。あなたは大人っぽいコーヒーで私は子供なミルクだけど、そんなふたりでも一緒にいたら混ざり合って素敵になるってやつ」
わかったようなわからないような。何を言い始めたんだか。うん、と言いながらプリンを一掬いして口に運んだ。
「僕たちを表すなら、ハニーミルクがいいな」
「はちみつと牛乳?」
「そう。あまくてあったかくってほっとする、みたいなこと」
「なるほど」
わからないけど聞いてるよ、の相槌。ニコはどう?って聞かれるんだろうけど、そんなのわからないから聞かれる予想なんてできていないふりをした。
「ねえ、ニコはどう?」
「何が?」
「わかってるんでしょ、考えるのがめんどくさいって顔してるの、わかるんだからね」
そこまでわかってるんだったら、きっと何も浮かんでいないのもバレているんだろう。俺は諦めて、飲み物が並んでいるカフェメニューを開いた。
コーヒーや、アルコールはなんとなく違う気がした。ふたりのどちらも、大人っぽさはあまり持ち合わせていない。過去にだけは、少し苦味も含んでいるけれど。
「そんなに甘くて優しいかな、ふたり」
「優しいでしょ、ニコは特に」
そんなことほとんど言われないな、と思いながらメニューを眺める。
「レモンスカッシュとかかな、」
手を挙げ、店員に注文する。
「酸っぱいとこもあるし甘すぎないし。あんまり可愛すぎても違うでしょ」
「そっか。ニコが考えてくれて嬉しい。」
口では嬉しい、と言いながらも声色が納得していない。
店員がグラスを運んでくる。透明なグラスにレモンの黄色が綺麗に透けている。
レモンスカッシュが届いてから、セイジはずっとこちらの手元を覗き込んでいる。きっと何か考えているのだろう。
「じゃあハニーレモネードにする。それでいい?」
黙り込んでいたセイジが、急に口を開いた。
「ふたりの意見の真ん中ってことか」
「そう、かわいいからいいかも」
セイジの表情は緩んで、よくわからないけれど納得したようだった。
頼んだレモンスカッシュを口にする。思っていたよりも苦みが強くて、炭酸も激しかった。
ふたりの関係を表すならハニーミルクくらい甘いほうが良いのかもと思いつつ、さらにもう一口を飲み込んだ。