星空と 冬は夜空が綺麗だから、帰り道は少しだけ夜道を歩いた。彼の言う通り、ビルの輝きの隙間からでも星空がはっきり見えたような気がした。
今日は珍しく少しだけおしゃれなレストランで夕食を食べた。おしゃれなレストランは、メニューの量を増やすのが大変でなかなか行かない。それでもたまには普段と違うことをしたくて、予約をとったのだった。
「ニコ、あの量でごはん足りた? 三人前くらいしか食べてなかった気がするけど」
「足りないけど、あの店ではあれが限界だった。頼みすぎても迷惑だし。」
「それもそうか。ウエイターさん、最後の方の注文で笑顔引き攣ってたもんね」
セイジは笑いながらこちらを見た。
「星空、綺麗だね」
「セイジ、星空好きだよね」
「うん、星はいろんなことを教えてくれるから。」
この目には遠くに見える模様のような星空から、セイジは何を読み取っているのだろうか。
隣の彼の考えていることがわかっているつもりだったがわかっていないことに気づき、ただでさえ厳しい外気が更に冷たく感じた。
「寒くて風邪ひくから、もう帰ろう」
セイジは驚いた顔をして、つないでいた手を引っ張った。
「まだまだ一緒に街歩こうよ! みんな通る中でふたりだけで会話してるの楽しいよね!」
本当は寒くてお腹がすいたので本当に家に帰りたいが、セイジの前では妥協するしかない。あそこまでねとひとつ先の信号を指さして、そこに行ったら部屋に戻ろうと決心した。
距離を決めた途端、セイジの歩幅がこれまでの半分ほどになった。これはこれで困る。
「暗闇で急にふたり消えたら問題になるんじゃない? もっと先まで行こうよ」
「もう寒いから、いいでしょ」
これ以上歩くと帰る気力が無くなりそうだったので、セイジもまとめて無理矢理家に帰ってきてしまった。後ろに人がいないか、確認するの忘れてたな。
「あれ! 帰ってきちゃった! しかもニコの部屋に」
悲しそうな顔をしているかもしれないと覗き込むと案外満足げな表情で、少し安堵した。 セイジの言う通り星空は綺麗に見えるし、寒い中で手をつなぐのも少しだけ悪くないものだとわかった。
楽しかったね、星が綺麗だったねと言いながらコートをハンガーにかける。
やっと本当にふたりになったので、後ろから少し背の高い彼を抱きしめた。
「ずっとこうしたかったけど、外だとできないから。」
「ニコ…?!」
こうしていると、手をつないでいるよりもセイジの体温を感じられた。