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    Daisy_mhyk

    @Daisy_mhyk のまほやく小説置き場

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    Daisy_mhyk

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    両片思いのフォ学ブラネロ。
    青はぴ展示作品

    ブラッドリーが離別を機に、ネロへの気持ちに気付くお話。
    ボスはモテるけどケンカ三昧で色恋興味無い設定です。

    My fate 俺とネロは、幼馴染みで、最高の相棒だった。
     どんな喧嘩でも背中にネロが居るだけで力が湧いたし、実際、地元では負け知らずだった。ミスラに出会うまでは。
     高校に進学し、不良校の生徒の癖にモデル気取りのスカした奴が居ると聞いた俺は、そのご自慢の顔を潰してやろうとチームを引き連れ二年のクラスへ乗り込んだ。
     結果は惨敗。俺自身も全治一ヶ月の怪我を負い、ネロにはもうミスラに手を出すなとキツく言われた。が、強え奴がそこに居るのに、挑まねえ理由はねえ。そうして何度も入退院を繰り返すうち、遂にネロに愛想を尽かされてしまった。
    「…もう、ついていけねえよ。勝手にくたばれ、馬鹿野郎」
     絞り出すように告げられた別れの言葉。伸ばしかけた手は空を切り、その背には届かなかった。
     毎日のように連んで、ケンカして、ネロの飯を食って。そんな俺の日常は唐突に終わりを告げ、胸に空いた虚を埋めるよう一層ケンカに明け暮れたが、ぽっかり空いた穴は埋まるどころか暗さを増すばかりだった。
    「もういい加減にしたらどうです? あなたじゃ俺には勝てませんよ」
     ま、暴れられるのでどうでもいいですけど。サラリと俺の攻撃を躱し、ミスラが気怠げに零す。
    「…るっせえ!」
     大振りな俺の攻撃は当たるわけもなく、空を切った腕の勢いに釣られてよろけた。体勢を崩したと同時に、下から突き上げるようにミスラの膝が俺の鳩尾へとめり込む。
    「ぅッ…!」
    「もういいですか? 正直、最近のあなたは詰まらないですよ。一体何と戦ってるんです?」
     片膝をつく俺に、容赦なくミスラが溜め息を吐く。
     何と戦っているのか。そんな事、俺が知りたい。目の前に居るのはミスラなのに、どれだけ挑んでも挑んでも心が躍らないのだ。
    「うるせえ! 俺はまだ立ってるぞ!」
     がむしゃらに、力の入らない拳を振り上げ殴りかかる。ミスラが面倒くさそうに目を細めたのを見た瞬間、視界は真っ暗になった。

    「…い、おい! ブラッド!」
     ハッと我に返ると、目の前にネロが居た。
     状況が読めずに目線を振ると、どうやらネロのアパートの玄関扉へ凭れ、座り込んでいるようだ。全身が痛い。
     ミスラが運んだのか、それとも自分の足でここへ来たのかすら分からない。久しぶりに見た幼馴染の顔に怒気は無く、ポロポロと涙を流していた。
    「ネロ…」
    「またミスラにケンカ売ったのか…?」
    「ああ、悪ィ…」
    「悪いって思うなら、もう止めろよ馬鹿野郎ッ! てめえのボロボロな姿なんか、見たくねえよ…」
     ぐしゃぐしゃに顔を歪めたネロが叫ぶ。泣きながら怒鳴られ、鈍い頭で漸く悟った。
     ああ、そうか。ネロは言う事を聞かない俺に怒ってたんじゃない。心配してくれてたのか。
     力なく震える指先で、ソッとネロの目元を拭う。そのまま頬へ手を添えると、触れ合った肌越しに体温が溶け合い、じんわり胸の暗さが薄まるのを感じた。
     何だろう、この気持ちは。
     自然と薄い唇へ向いた目が離せなくなり、その感触を確かめたい衝動に駆られる。
    「悪かったよ…なあ、」
     ぐううううううううううう。
     紡ぎかけた言葉は、俺の腹の虫に容赦無く遮られた。確かに腹は減っていた。だからと言って、こんなタイミングで鳴らなくたっていいだろうが。
    「…く、ははっ。中、入れよ。食うもん作るからさ」
    「…いいのか?」
    「相棒は辞めたけど、幼馴染を辞めたつもりはねえよ」
     ほら、と腕を担がれ、支えられながら立ち上がる。
     以前は我が家のように訪れていたネロの家へ入った瞬間、まるで長く離れていた故郷に帰ったように、心が柔く解れていくのを感じた。

    ***

     シャワーを借りて汚れを洗い流し、傷の手当ても終わって漸く人心地がついた頃。ネロがジュウジュウと何かを炒める音を聞きながら、俺は先ほど抱いた衝動を思い返して頬が熱くなるのを感じていた。
     さっき、俺は、ネロに何をしようとした?
     腹の虫が騒がなければ、何を口走るつもりだったのか。いつから俺は、ネロをそういう風に見ていたのだろう。一度自覚してしまうと、思い当たる節が次々と浮かび、余計に熱が引かなくなった。
    「ほら、お待ちどうさん。…って、顔赤いけど、大丈夫か? 熱でも出てきたか?」
     コト、とローテーブルへ丼ぶりを置いた手で流れるように額へ触れられ、反射的に避けてしまった。前まで当たり前だった触れ合いが、今は過剰に意識してしまってダメだ。
    「な、何ともねえよ。殴られたとこ、腫れてるだけだろ」
    「? ならいいけどさ」
     避けたからか、一瞬怪訝な表情を浮かべたネロだが、追及はせず大人しく俺の正面へ腰を下ろす。いつの間にか制服から私服へ着替えたネロは、黒のタンクトップに首周りが広く開いたニットセーターを緩く着ていた。
     …ダメだろ、その服。
     いや、確かに以前からゆったりした服を好んで着ているのは知っていたが、今はひたすら目のやり場に困る。
    「…ほんとに何ともねえの?」
     赤面したまま黙り込んだ俺を、ネロがこてん、と小首を傾げて覗き込んだ。
     …こんな、あざとい仕草をする奴だったろうか。
    「何ともねえって」
     動揺を誤魔化すように吐き捨て、乱暴に丼ぶりを持つとガツガツ掻き込んだ。
     ネロの飯は美味い。身体の隅々まで沁み渡るように、食えば心も体も満たされる。
     そんなネロの飯も、こんなに味が分からないのは初めてだ。
     喧嘩三昧で色恋なんて興味の欠片も無かったのに、よりによって幼馴染みに惚れるなんて。
    「…なあ、ブラッドは進路、どうすんの?」
    「あ? 進路?」
    「来年のクラス分けがどうのって、紙、もらっただろ?」
    「あー、あれか。なんも考えてねえなあ」
     モグモグと咀嚼しながら、そういえばあったなとプリント用紙を思い出す。就職か進学か。就職ならば職種、進学ならば現時点での志望校の記入欄があったような気がする。
     適当に高校へは入学したが、ここから先の進路は訳が違う。特に考える機会も無く今日まで過ごしてきたが、いよいよ将来というものが現実味を帯びてきた。
     特に継ぐべき家業も無いし、やりたい仕事も無い。
     進学してまで学びたい分野も無い。
     つくづく俺にはケンカしか無えな…と自嘲しかけたところで、ふ、と閃いた。そうだ。俺にはケンカがあるじゃねえか。
     戦うことへ人生を懸ける生き方を、俺は知っている。
    「格闘家…」
    「は?」
    「そうだ、ネロ! 俺は格闘家になって頂点獲るぜ!」
     格闘家になれば、強い奴と戦えて、金も稼げて一石二鳥だ。
    「今までしてきた野良のストリートファイトじゃねえ、ルールに則ったモンならてめえも心配ねえだろ?」
    「そりゃ、まあ、そうかも…?」
     首を傾げてはいるが、ネロも同意してくれた。そうと決まれば、後は道を突き進むべく何をすべきか調べて実行するのみだ。
     丼の残りを飲むように胃へ収め、すっくと立ち上がる。
    「ごちそうさん」
    「お、おう…」
     いつものように食べた食器を流しで洗い、じゃあな、とネロの家を後にした。
     すっかり涼しくなった外気が頬を撫で、晴れ晴れとした気分を凛と染めてくれる。こんなにスッキリした心持ちはいつ振りだろう。
     心に空いた虚も、いつの間にか消え去っていた。
     やっぱり俺にはネロしか居ねえ。ネロも、多分、今までの事を振り返ると満更でもない筈だ。
     これからも並んで生きていく為に、今度は出来る事をしよう。
     俺はひと伸びすると、パンッと頬を両手で叩き、気持ちを新たに帰路に就いた。
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    Replies from the creator

    Daisy_mhyk

    DONEあったかい事と、いい匂いがする事しか分からない。


    現パロブラネロ【大学生ブラッドリー×女子高生ネロ】
    二人が社交ダンスを通じて出逢い、想いを繋げていく少女マンガ風ラブコメディー
    バレンタインのお話です。

    ⚠先天性女体化
    ⚠世界観の都合でネロの一人称が「あたし」です
    心に触れて ——ついにこの日が来てしまった。
     製菓会社の策略に乗せられているのは十二分に分かっている。自分はキリスト教徒ではないし、そもそも聖バレンタインという人物が何をしたのかすら分からない。
     分からないが、毎年のように町中がピンクとチョコレート色に染まり、雑誌もチョコレート特集に埋め尽くされ、この日に向けて色めき立つクラスメートたちに囲まれ年を重ねれば自然と意識が向いてしまうものだ。
    「……そう、だからこれはなんつうか、空気に流されたというか……」
    「ブツブツとドアに向かって何言ってんだてめえ」
     背後から聞こえた訝し気な声に、ネロの心臓は盛大に跳び上がった。
     レッスン場があるビルの入口前、立ち尽くしていたネロが反射的に振り向くと、そこには大きな紙袋を片手に下げたブラッドリーが首を傾げて立っていた。見慣れぬ紙袋に自然と視線が向いた先、その中には可愛らしくラッピングされた有名店のチョコレートたちが所狭しと収まっている。
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