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    Daisy_mhyk

    @Daisy_mhyk のまほやく小説置き場

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    Daisy_mhyk

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    MHfes展示作品です。
    カナリアが魔法舎に勤めはじめの頃にブラネロを嗅ぎ、そういうことになってるんでは?と思うお話。
    ⚠カナリア視点なので、腐表現ありません。
    ⚠カナリアの前職は城メイド設定(どこかに情報出てたらすみません)

    腐表現ありませんが、ブラネロ賢者が書いてるのでこの二人はブラネロです!

    いつかの未来を願って。 朝、一番鶏の声で目を覚ます。カナリアは微睡む事なく体を起こすと、隣で穏やかに寝息を立てるクックロビンの頬にそっとキスを落とした。
     テキパキと身支度を整え、まだ寝静まる街中を抜けて新たな勤め先へと向かう。
     中央の市場より程近い場所に建つ、賢者と、その魔法使い達が過ごすために造られた魔法舎。噂に聞くだけだったその場所にまさか自分が立ち入る事になるなんて思いもよらなかったが、旦那のクックロビンを救ってもらった縁により少し前から身の回りの世話をさせてもらっている。
     「魔法使い」に偏見はないつもりだったが、心のどこかで身構えていたらしい。勤め始めて数日、率先して手伝いを申し出てくれる魔法使い達の優しさにホッと気が緩んだ事が少しショックだった。
     まだ数日しか接していないが、魔法が使えるというだけで皆人間と変わりないのだと知った。それに、何よりみなさん男前! 今度、城の使用人仲間に会ったら詳しく話そう……なんて事を考えている内に魔法舎へと辿り着いた。
     日中とても賑やかな場所だが、この時間はまだシンと静まり返っている。歴史ある建物が醸し出す、独特な神聖さを感じる空気を味わえるので、カナリアはこの時間を少し気に入っていた。
    「……お。おはよう、カナリアさん。早めに起きちまったから、先に進めといたよ」
     長い廊下を抜け厨房に入ると、既に野菜を刻むネロの姿があった。東の国で料理屋を営んでいたという彼は、慣れないうちは大変だろうからと食事の支度を手伝ってくれている。
     正直なところ、料理が得意とは言えないためとても助かっていた。そして何より彼の作る料理はとても美味しく、ひと手間の加え方や食材の保存方法まで色々と教えてくれるから勉強にもなっていた。
    「おはようございます、ネロさん。あらやだ、私ったら、着くのが遅れちゃったかしら」
     先に進めておいた、というか、ほとんど支度が終わっている調理場の様子に思わず焦った声を上げてしまう。
    「いや、俺が早く目が覚めちまっただけだから、気にしないでくれよ。それより、仕込みの時間がたっぷりあるからさ、昼飯のメニューこれに変えねえ?」
     そう言って提案されたのは、肉を使わない、珍しく野菜がメインの料理たちだった。ささやかな驚きが顔に出ていたのか、ネロが眉尻を下げて言葉を続ける。
    「今日で使い切りたいやつがいくつかあってさ」
    「あら、そうなんですね。またお野菜の鮮度の見方も教えてください。ネロさんには教わることが多くて……こうして一緒にお料理が出来て、とても嬉しいです。手伝って下さってありがとうございます」
    「はは。そんな大したことしてないけどさ。んじゃ、まずは朝飯の準備終わらせちまうか」
     残った工程は盛り付けだけ。それをカナリアが担い、ネロは引き続き野菜の下処理に回ることになった。
     カナリアが均等になるよう気を配り(明かな多い少ないがあると、朝からでも北の魔法使いさんたちが喧嘩に発展する事をこの前学んだ)盛り付けていく背で、ネロが軽快なリズムで野菜を刻んでいく。
     気のせいだろうか。いつも見事な手際に惚れ惚れするのだが、いつにも増して手早く切り進めているように感じた。
     もしかして、何か朝から用事があるのだろうか。
    「ネロさん、今日はどこかへ任務でお出かけですか?」
    「いや、今日は東の連中は朝食後に座学だよ。この年にもなってオベンキョーする事になるなんて、思ってもみなかったな」
    「ふふっ。ネロさんはお嫌いですか? お勉強」
    「嫌いっつうか、こう……みんなで机に並んで座って、何かを教わるなんてした事なかったからさ。今までは、知りてえことは見て盗め! 体で覚えろ! って感じだったから」
    「あらあら……厳しいお師匠様だったんですね?」
    「いや、師匠なんてもんは居なかったけど、まあ、そんな感じだったんだよ。お、それ終わった? んじゃこっち頼めるかな」
     よろしく、と手渡されたグリーンフラワーをサラダ用に細かく千切り分けていく。
     あれ? もしかして、はぐらかされたのかしら。
     そう思った頃には食堂が賑やかになり始め、怒涛の朝食の時間が幕を開けた。

     その日の午後。賛否両論に分かれた昼食の後片付けを済ませ、カナリアはメモを片手にネロに菓子作りを教わっていた。子供達に作るから、よかったら一緒にどうだと誘われたのだ。きっと、あまり菓子作りの経験がないと呟いた事を覚えていてくれたからだろう。
     料理も菓子も作れて、気も利いて、優しくて男前。なのに、奥様が居る気配が無いのが不思議でならなかった。きっと引く手数多だろうに。
    「ネロさんはお料理もお菓子作りも手際が良くて、しかもとびきり美味しくって! 本当に尊敬します。東の国では、ずっとお一人でお店を営まれていたんですか?」
    「ああ。一人の方が、気が楽だからさ。ああいや、あんたと飯の用意するのが気を遣うって話じゃねえからな」
    「ふふ、分かってますよ。ネロさん、優しくて男前だから、東の国に良い人でも居るのかなって……」
     言葉の途中で、バンッと食堂の扉が乱暴に開く音が響いた。反射的に音のほうへ顔を向けると、北の魔法使い・ブラッドリーがこちらへズカズカと向かっている所だった。
     幼い頃から語り草に彼の名を聞いていたカナリアは、ブラッドリーと初めて顔を合わせた時、恐ろしい逸話から想像していた粗暴な容姿とかけ離れている事に驚いたのが記憶に新しい。確かに言葉遣いは乱暴だし、横暴な素振りはある。でも、身につけている物は一級品ばかりだし、何より食事中の表情が誰よりも生き生きとしていて好感が持てた。
     食べ物をねだりによく厨房へ顔を出す所は、ちょっと可愛いとすら思ってしまう。
    「よう、邪魔するぜ」
    「なんか用かよ。てめえに出せるモンなんか、何もねえからな」
     普段穏やかなネロが、珍しくピリピリとした空気を纏う。いつもなら適当に余り物を差し出したり、手早く作れる物を用意しているのに。
     虫の居所が悪いのだろうか。それとも、二人の間に何かあったのだろうか。
    「そうカッカすんなよ……ほら、これ。くしゃみで飛ばされたついでに採ってきてやったぞ」
    「これ……! 東と中央の国境付近の山奥でしか採れねえキノコじゃねえか! あんた、そんな山奥まで飛ばされてたのかよ」
     確かに、今朝の朝食にブラッドリーは来なかった。昼食の時も。いつも食事には欠かさず姿を見せるのに、と少し心配していたのだが、どうやら《厄災の傷》とやらのせいで遠くに飛ばされていたらしい。
     先日、中庭の掃き掃除をしていた所に通りかかった彼へ土埃を被せてしまい、謝る前にくしゃみと共に姿を消してしまった時はとても驚いた。
     ネロの言葉に、ブラッドリーが意地の悪い笑みを返す。
    「お陰様でな」
    「うっ……わ、悪かったよ。なあ、カナリアさん。このキノコ食ったことある? 煮込んでも美味いんだけど、ステーキにすると格別なんだ。今日の晩飯に加えてもいいかな」
    「え、ええ! もちろん」
     機嫌を直した様子のネロが、キノコが山盛りに詰まった籠をこちらへ見せる。その背で、ブラッドリーがふわ、と目尻を緩めた。
     初めて見る、穏やかな眼差し。思わず目を瞠るのも束の間、ブラッドリーはそのまま踵を返して厨房を出て行く。その気配に気づいたネロが慌てて振り向き何かを言いかけたが、言葉を発する前にその唇は閉じられてしまった。
    「……あのさ、メインにフライドチキンも足していいかな。あいつ……ブラッドリーは、キノコ食わねえからさ」
    「ええ、もちろんです」
     別々の国出身の二人だけれど、もしかしたら過去に接点があったのかもしれない。絆のような、温かなものを感じた事は胸に伏せ、カナリアは菓子作りの続きへと手を戻した。

    ***

    「カナリア。きみは、プレゼントを貰うならどんな物が一番嬉しい?」
    「ええっ、何かしら……。急にどうしたの?」
     ある日の夜。カナリアとクックロビンは、久しぶりに二人で食事に出かけていた。魔法舎勤めにも慣れ、漸く二人で休日を合わせられたのだ。
     魔法舎へ勤め出し、魔法使いは皆自分の身の回りの事はだいだい魔法で片付けてしまえるという事を知った(後から、髪の毛などを魔術の媒介にされるのを避ける為だと教えてもらった)。そのため、洗濯は共用の物が殆どで、食事の支度と各所の掃除でカナリアの一日は終わる。魔法舎は広い上に使用人も他に居ない為、その各所の掃除に中々骨が折れるのだった。
     その上、よく北の魔法使い達が魔法舎を壊すため、先ほど掃除したばかりの場所が直後に瓦礫に埋もれる事も珍しくない。そんな時はスノウとホワイトが直してくれるのだが彼らが出払っている時もあるので、育児中の友人が「片付ける側から散らかされる」と嘆いていた気持ちが分かるようになってしまった。
     クックロビンの方はというと、各国からの依頼書の整理や買って出た報告書の作成が忙しいらしく、カナリアより随分遅くに帰宅する事もしばしばだった。
     新婚とは言い難い生活になってしまったが、お互い充実しているので不満はない。
    「少し前に、市場でドラモンド様がお花を見繕っていらしたんだ。珍しいなって思って声をかけてみたら、最近お忙しくて奥様との約束をすっぽかしてしまったとかで。それで、お怒りになられた奥様のご機嫌伺いに贈り物をしたそうなんだけど、俺も、もし君を怒らせてしまった時の参考にしたいなと思って」
    「あなたってば本当に素直な人ね。でも、そこが素敵。……ああ、そうね。きっとそうだわ」
    「? 何が『そう』なんだい?」
    「……ふふっ。内緒」
     たまに、朝食当番でない日も朝早くにネロが厨房に居る事がある。そして、そういう日は決まって包丁のリズムが速い事に気付いた。本人は普段通りに見えるし、振舞ってはいるが、ほんの少しだけ纏う空気が重い事も。
     そしてもう一つ。そうしてネロの野菜を刻む手が速い日は、いつもブラッドリーが手土産と共に顔を出すのだ。
     最初は偶然かと思った。けれど、いつもは強引な所もあるブラッドリーが少しだけしおらしく、ネロの機嫌を伺う様は何かに似ていると思っていたが……今の話で漸く腑に落ちた。
     ネロの年齢は聞いていない。でももし、ブラッドリーと同じくらい長く生きているのだとしたら。二人は仲が良いことを隠しているようだが、自分が思う以上に深い絆で結ばれているのかもしれない。
     いつか、二人が周りから隠れず、いつも素の姿で過ごせる日が来ますように。
     カナリアは胸の内で小さく願うと、そっとグラスを傾けた。
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    Daisy_mhyk

    DONEあったかい事と、いい匂いがする事しか分からない。


    現パロブラネロ【大学生ブラッドリー×女子高生ネロ】
    二人が社交ダンスを通じて出逢い、想いを繋げていく少女マンガ風ラブコメディー
    バレンタインのお話です。

    ⚠先天性女体化
    ⚠世界観の都合でネロの一人称が「あたし」です
    心に触れて ——ついにこの日が来てしまった。
     製菓会社の策略に乗せられているのは十二分に分かっている。自分はキリスト教徒ではないし、そもそも聖バレンタインという人物が何をしたのかすら分からない。
     分からないが、毎年のように町中がピンクとチョコレート色に染まり、雑誌もチョコレート特集に埋め尽くされ、この日に向けて色めき立つクラスメートたちに囲まれ年を重ねれば自然と意識が向いてしまうものだ。
    「……そう、だからこれはなんつうか、空気に流されたというか……」
    「ブツブツとドアに向かって何言ってんだてめえ」
     背後から聞こえた訝し気な声に、ネロの心臓は盛大に跳び上がった。
     レッスン場があるビルの入口前、立ち尽くしていたネロが反射的に振り向くと、そこには大きな紙袋を片手に下げたブラッドリーが首を傾げて立っていた。見慣れぬ紙袋に自然と視線が向いた先、その中には可愛らしくラッピングされた有名店のチョコレートたちが所狭しと収まっている。
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     だけど俺は全て遠かった。
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    『アドノポテンスム!』
     はは、元気でな、ブラッド。早く自由になれると良いな。囚人って身分からも、俺からも。
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    「……」

    「なあ、ブラッド」
    「何だよネロ」
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    「風邪か?」
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     おかしい。俺は夢でも見てるんだろうか。ラフすぎる服を来たブラッドがいる。それに、若い。俺の知ってるブラッドより見た目が若い。傷だって少ない。
     何より俺の声がする。喋ってなんてないのになんでだ?
    「ちょっと味見させてくれよ」
    「ああ、頼む」
     体の感覚はない。ただ見ているだけだ。
     若いブラッドが目の前の見たことのないキッチンで、見たことのない料理を 2283