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    WanwanYama00

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    ゲルブさんとお出掛けする話

    花畑で冠を編む 私、安久津めぐみは働いているホテルの自室で悩んでいた。
     目の前には色とりどりの花を生けた蜂蜜の瓶が置かれている。
     最近よく一緒に出掛けている、蜂のような見た目の男性・ゲルブさんから頂いた花達だ。
     ゲルブさんは私に会う時に、いつも小さな花束をくれた。大きな手でそっと差し出す良い香りの花はいつも嬉しい気持ちにしてくれた。
     いつも頂いてばかりなので、こちらもお礼の品でも渡したいが良い考えが浮かばなかった。
     彼の好む蜂蜜を使ったお菓子など作れれば良かったが、あいにく私は簡単な食事が作るのがやっとで、お菓子作りはからきしだった。
     手先も人並みだし、良いアイデアが浮かばない。ハアと大きな溜め息をついた。
     
     ゲルブさんとはホテルの客が話す話題の甘いものやおいしいものを食べに行ったり、互いの鍛練方法や最近の出来事などを話したりするだけだったが非常に楽しかった。
     ちょうど明日の休みもゲルブさんと出掛ける約束をしている。ベッドに潜り込んだが、遠足の前のような高揚感があった。
     結局贈り物のアイデアはベッドの中で考えるとして、明日に備えて目を閉じた。


     「めぐみ殿!」
     待ち合わせ時間より前に来ていたのか、ホテルの門でゲルブさんは待っていた。
     以前は町中に待ち合わせ場所を決めていたが、早く話がしたくてホテルの前で会うことにしていた。
    「待たせてしまったな。支度に手間取っていてすまない」
    「いえ!とんでもない!」
     ゲルブさんは慌てたようにぶんぶんと大袈裟に頭を振った。
    「あの!今日も可憐で!素敵であります!」
    「はは。ありがとう。貴方は毎回褒めてくれるので準備の甲斐があるな」
     ふわりとレースが揺れるお気に入りのワンピースを褒められて頬が緩んでしまう。
     ゲルブさんも慣れてきたのか、会った際に固まる回数が減った気がする。
    「今日は花畑に珍しい花が咲いていたのであります!よろしければ!」
     差し出された手には鮮やかな水色の小さな花が束ねられていた。
    「とてもきれいだ。いつもありがとう」
     大事にそっと受け取る。毎回違う花をくれるので密かに楽しみにしていた。きっと部屋の花束にもよく合うだろう。
     その時、私はひらめいた。
    「そうだ!急ですまない!今日はその花畑に行ってみたいのだが、ゲルブさんはどうだろうか?」
    「問題は無いのですが、少々遠いところにありまするが…」
    「いや、大丈夫だ。せっかくだから町で何か交換してお菓子でも持っていこう」
     楽しいピクニックになりそうだ。お菓子を調達すべく、私は足取り軽くゲルブさんと町へ向かった。


     ゲルブさんと道中お菓子を食べながら会話し向かった花畑は、想像以上に素晴らしかった。森の端まで様々な色の花で埋め尽くされている。また、なんとも良い匂いが辺りに広がっていた。
    「わあ!すごいなここは……!ゲルブさんは素敵な場所を知っているな!」
    「いえいえ!自分は偶然近くに住んでいたというか……!」
     あまりの美しさについ、はしゃいでしまった。我ながら子どもっぽい言動だったと少し照れたが、ゲルブさんも褒められて同じように照れている。
     二人して照れているので、面白くなって笑ってしまった。
    「ゲルブさん、少し待っていてくれ」
     私はスカートの裾に気を付けながら花畑に座って、花を摘んだ。色味を考えながらどんどん摘んだ花を編み込んでいく。
     黄色と黒の身体の色に似合うように、白をベースにして大きな花冠を編んだ。
     小さい頃、春先の公園で白詰草の花冠を編むのが好きだった。両親に見せると嬉しそうにしていたっけ。
    「ほら。素敵な花畑なので立派なのが出来た」
    「おお!めぐみ殿は手先が器用でありますな!」
     見せるとゲルブさんは感心したように褒めてくれた。私は立ち上がると、膝をついていたゲルブさんの頭に花冠を載せた。
    「いつもの礼には足りないけれど……」
     なんだか急に恥ずかしくなって、誤魔化すように照れ笑いをしてしまう。
     突然頭に載せられて驚いたのか、ゲルブさんは真っ赤になって固まってしまった。
     数秒固まった後、はっと気が付いて絞り出すように言った。
    「あ、ありがたき幸せ…!!されど花はめぐみ殿にこそお似合いであります…」
     ゲルブさんは足下から花を一輪取ると、震える手で髪に差した。
     くすぐったくてつい微笑んでしまう。
    「ありがとう。貴方もよく似合うよ」
     優しく褒めるとゲルブさんはまたピキンと固まってしまった。
     筋肉質の身体を強めに揺すったが、なかなか意識が戻ってこない。
    「ちょ、ゲルブさん!ゲルブさ~~~んッ!!!」
     静かな森の花畑に私の焦った声がこだました。
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