Stop the hero Stop the hero
猿轡を噛ませて手綱を付けろ
1*
四方八方、上空も足元も元ATFメンバーや軍関係者に包囲され身動きの取れなくなったルイス・スミスもといブレイバーンは、物理で怪我をさせないよう言葉巧みに誘導しにどうにかこの包囲網から逃れようといろいろしゃべり続ける
そんなブレイバーンの下に到着したイサミは足元に詰め寄り、手を痛めるくらい思いっきり殴りつけスミスになるように脅した
2*
スミスは悩んでいた
世界は復興の道を歩んでいるはずなのに、人々は保身のために助け合う手を放し、武力を手に取ろうとしている
未だ争いがなくならないことに心を痛めていた
そんなとき内なる声、ブレイバーンがある提案をしてくる
ブレイバーンは食事も睡眠もしない、当然排せつや身を清める時間も必要ない、ブレイバーンなっているときは人としての生活を行わなくてもいい、と
それならスミスの睡眠時間をヒーロー活動に充てられると
その話を聞いてスミスは乗り気になった、スミスは根っからのヒーローであり、スミスを媒体にして誕生したブレイバーンもまた根っからのヒーローだった
3*
それからスミスおよびブレイバーンは、スミスの睡眠時間を使って極秘にヒーロー活動を始める
といってもブレイバーンが人前に出てしまえばいろいろ問題になるため、ビルドバーンを使い、ブレイサンダーをカスタムカーに見立て、暴動や略奪など争いが起きそうな地域の見回りを行い、その気配があればビルドバーンで作った誘導型支援機を使って、事前鎮圧などを繰り返した
おかげでブレイバーンの関わった地域は少しずつ穏やかになり、復興が進んでいった
4*
そんな日々を送っていたある日、スミスは演習で起きた事故に巻き込まれ、ちょっとしたケガをする
直ぐにニーナ大尉の手当てを受けたが、その時に測った数値に異常が見られ、精密検査を受けることになる
精密検査の結果、スミスの体は常人の倍の速度で老化が進んでいた
その老化現象にスミスは思い当たる節があったが、話してしまえばヒーロー活動を止められると分かっていたために何も分からない振りをした
軍と国はとりあえず原因を突き止めようと、スミスの仕事を取り上げ、経過観察を行うことにした
しかしスミスは軍の仕事を取り上げられても尚、極秘のヒーロー活動は続け、スミスの身体は良くなることはなかった
5*
同じく英雄の一人であるイサミの下にもスミスの異常は伝えられ、何か思い当たることはないかと意見を求められる
イサミは少し考えた後、ブレイバーンの中にいるときの感覚を思い出す
6*
その後スミスは様々な検査を受けさせられ、夜にも監視がつくようになり思うようにヒーロー活動ができない状況にストレスを溜めていく
そんなスミスにイサミが会いに来る
イサミはスミスに勝手にブレイバーンになっていないかと聞く
当然スミスはしらを切り、何も知らない振りをした
しかしイサミはスミスがブレイバーンになって活動をしていることを疑わず、スミスが口を割るまで問い続けた
イサミの追求から逃れられないと悟ったスミスは観念し、心配するイサミへ身体を寄せ謝罪の口づけを送った
7*
そのキスに照れてしまったイサミは一瞬硬直し、スミスはその隙を見逃さずきついボディブローを叩き込み、イサミの脇を通り抜け逃走した
階下への向かう手段は階段かエレベーターのみだったが、スミスは上を目指した
屋上へ扉を壊し端まで走る、そして追ってきたイサミに一言謝り、10階の高さからなんの躊躇もなく飛び降りた
目の前で飛び降りたスミスに一瞬肝が冷えたがその後響いた変身の口上を聞き、苛立ちを抑えきれなくなったイサミは屋上の扉を拳で思いっきり叩いた
8*
イサミからの逃亡に成功したスミス及びブレイバーンであったが、実は既に詰んでいた
飛び降りた眼下にはたくさんのTS機と戦車が並び、空には戦闘機やヘリが飛び交い、9mあるブレイバーンの巨体を封じていた
そして次々と機体を降りパイロットや軍関係者がブレイバーンの足元に集い、彼らを傷つけられないブレイバーンはその場に膝をつき一歩も動けなくなってしまった
そうして人に捕らわれたブレイバーンの下に、彼の大事なパイロットが鬼のような形相で到着し、ブレイバーンは小さく泣いた
イサミの圧に観念したブレイバーンがスミスになった瞬間、全隊員総動員で取り囲み、麻酔薬を打ち込み、変身口上を述べられないように猿轡を噛ませ、万が一変身されたときの手綱としてスミスの腕にイサミとつなぎ拘束した(本当は反対側にルルも付けたかったが流れ的にカット)
9*
こうして世界を救ったヒーローの善行は止まり、無理のないヒーロー活動をすることを約束させられた
「ブレイバーンはともかく、スミスお前は人間なんだから、ヒーローだけじゃなく人もやろううな? それからブレイバーン。お前”わざと”スミスを煽るのはやめろ」
「まさか。私はただルイス・スミスの願いに共鳴しただけだ。私たちは根っからのヒーローだからな」
「だとしても、スミスは俺と同じ人なんだよ。スミスがいなくなったらお前も困るだろ」
「ははは。そうだな。ルイス・スミスもまた救うべき”世界”〈大切なもの〉のひとつだな」
薬によって強制的に眠られされたスミスの中から浮上してきたブレイバーンはイサミとそんな会話をして、またスミスの中に沈んでいった。