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    masasi9991

    @masasi9991

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    ちょっとしたことでご機嫌なデググラ

    ##デググラ

    宝探しパイ


     今日はいい日だ。天気がよくて、寒くもないし暑くもない。秋の昼下がりらしい涼しい風と、青い空に少しだけ浮かんでいる白い雲がいい具合だ。
     空ばっかり見ているって、わけじゃない。キミを見上げると、どうしてもその向こうに空が見える。店を出てからご機嫌でスキップしながら先を行くキミを追いかけて、道の途中で突然キミが、あっと声を上げて振り返ったところ。
    「グランツ! おまえの分はどうだった?」
     と、キミはおれの手にした袋を指差しながら大慌てで尋ねた。
    「おれの? まだ開けてないな。というかこれはおれの分じゃなくて、おれたちの分だろう。一人でこんなに大きなパイは食べ切れないぜ」
    「そうかな?」
     首をかしげる、キミを見上げる。その向こうに空が見える。日差しも眩しい。とてもいい日だ。
    「まあさっき店で食べた分のパイはハズレだったけどな」
    「そうだったのか!? そ、それじゃおれのこの、大当たりのウサギの王子様の人形を、お、おまえに……」
     そう言いながらも踏ん切りが付かないのか、キミの手は小さな陶器の人形を大事に握っている。大きくて骨ばった手に握られた人形はそら豆のように小さく見える。さすがに、いくらキミの握力でも握りつぶしてしまうということは、ないだろうが。
    「ふふっ。いいさ、宝物はハズレだったけどパイも他の料理もおいしかった。それにお土産のパイはホールで買ったから、全部食べればまた誰かが当たるはずだ」
    「しかしおまえが当たるとは限らないぞ」
    「いいさ。キミが当たってもロックやロッタナたちが当たっても、おれにとってはうれしい。キミのご機嫌な顔が見れるからな」
    「おれの顔が見たいのか?」
    「ああ」
     不思議そうに聞き返して、ちょっと何かを考えたかと思ったら、今度はキミはぐぐっと背を屈めた。顔が近づいてくる。
     もう空なんか見えないぐらい、視界がキミでいっぱいだ。
    「ぷっ、あはははっ」
    「むふふ。そうか、おれの顔がいいのか。うんうん。そういうことか。いくらでも見ていいぞ!」
    「あっはっはっはっは! ホントにかい? ふ、ふふっ、いつも見させてもらってるけど、あはは、もっと……」
    「おれはいつでもご機嫌な男だからな! むふふふ。わっはっは。こんなに近くで笑い合うと、くすぐったいな」
    「あ」
     キミが腹を抱えて笑うと、顔が離れてしまった。残念だ。キミもしまった、という顔をする。
    「もっと近いほうがいいか!?」
    「あはっ、ははは、そうだな、でも家に帰ってからの方が、いいかな? まずこのパイが温かいうちに、ロッタナたちも一切れ食べたいだろうし」
    「うむ、そうだな! 温かいパイは格別だ!」
     パイから出てきたウサギの人形を手のひらに乗せて、ご機嫌になってうんうんとうなずく。そんなキミをまた、晴れた空を背景に眩しい気持ちで見上げる。今日もいい日だ。
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