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    masasi9991

    @masasi9991

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    改札に引っかかる土蜘蛛さん

    ##妖怪ウォッチ

    只、見返してやりたいのだ


     随分気が立っている。お館様の短気はいつものことですから、ただ皆んなしてハイハイと頷いておけばいいのです。いくら気が立っているとしてもお館様のこと、よほどのことでなければご命令に間違いはありませんでしょうし、よほどのことでなければそのうち気が済むでしょう。
    「車ですか。牛車か馬車か妖力車か。それとも所謂自家用車を手配しますか。それでどちらまで? は? 人間界のその辺をブラブラするだけのために、手配せよと? 馬鹿馬鹿しい。自分の足で行けってんだ」
     客間の入り口まで呼び出され、つらつら命じられるままにハイハイと返事をしていた者が、途中から随分な呆れ顔になった。どうにもよほどのことらしい。お茶と茶菓子を抱えて台所と客間をふよふよと往復してるだけのわたくしには、関係のないことのようですが。
    「遠いなんて何を今更。電車に乗ればすぐでしょう。ここ最近は人間界の駅まで直通のやつも出てるし、それにまさか、一人で電車に乗れないなんてその歳になって、まさか」
     一笑に付されてお館様は口をつぐんだ。ぐうの音も出ないという顔のようで、白い顔にカッと赤く血が登って、額には青筋が浮かんでいる。これはよほどだ、クワバラクワバラ。
    「きっぷを買って改札に入れりゃいいんです。機械に小銭を入れて、改札の機械の口に……」
     さすがのお館様でもそのくらいのことは知っているでしょう。しかし今に雷が落ちますよ。そんなことはわかっている、わかっているが、しかし絡繰りなんぞ思ったとおりに動かない。信用ならんのだ。といった具合に。
     巻き込まれないよう一足先に客間から引っ込むことにしましょう。さっきまで客間にいたお客はもう帰った後だとは知っています。だってあの方、帰り際台所へ立ち寄って、随分長話しておりましたから。
     なんでもお館様、先日お二人で人間界をぶらりぶらりと物見遊山のその間、電車に乗るたんび何度も改札に引っかかったそうで。そのたび人の駅員に事情を説明して助けてやるのにずいぶんずいぶん手間取ったと、その方が笑い話を。今日は電車に乗る練習をしてやろうと提案したそうで、大きな雷を落とされて撤退だと、やはり笑っておりました。
    「只、あれを見返してやりたいのだ」
     落ちた落ちた、駄々のような雷が。少し離れた廊下で聞きました。


    (了)
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