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    masasi9991

    @masasi9991

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    masasi9991

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    土ガマ 都々逸そのまんま

    ##妖怪ウォッチ

    膝枕させて辺りを見まわし そっと水を含んで口移し


     閉じたまぶたを透かして見える、八間行灯の淡いまぶしさに影がかかる。ぼんやりとした輪郭は馴染みの形だ。
     影は、近づく。ふわりと花か、蕾か、新緑か、霧の深い野山にでも放たれたかのような香りが微かに漂う。
     薄目を開けて驚かせてやろうか。少しばかり悪ふざけが頭に浮かんだものの、枕にした脚があまりに心地がよいので、瞼を持ち上げるのにも一苦労。などと夢うつつの一人相撲をしている間に、唇に柔らかなものが押し当てられる。
     少しばかり熱い。生ぬるい。さらにぬるい、ぬるぬる濡れた舌に唇をこじ開けられ、冷たい雫を流し込まれる。飲み込めば熱に浮かされた身体の芯が、スゥーと心地よく冷えた。
     で、観念して瞼を開く。
    「起きたのかい?」
     行灯の淡い炎の眩しさよりも眩しい、青白い肌がすぐに目に入る。その瞳は赤い。吾輩に口移しに水を飲ませた唇もまた赤い。膝に乗せた吾輩の顔を見下ろし、静かに笑っている。
     遠くに宴席の騒がしさが聞こえている。同じ座敷のことであろうに、寝惚けか酔いか、因はどちらかわからぬけれども、聞こえてくるのはまるで別な世界のことのようだ。
    「まだゆっくり寝ててもいいんだぜ」
    「あんなことをされて、寝ては居れぬ」
    「ゲコゲコ」
     上機嫌に笑う。頬に赤みが差している。あちらも酒が回っているようだ。故にか、唇は温かかった。
    「だってそんなに酔っ払って倒れちまったら、心配にもなるさ」
     笑いながら、そう言う。心配という顔でもないが。
     ぼんやりとその顔を見上げていると、再び机の上の水を口に含み、あたりを見回しそっと目を伏せ、膝の上へ顔を近づけた。


    (了)
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