朝のお決まり 意識は、タイマーで仕組んだ通りの時間に覚醒した。起き上がり、アーマーを身につける……が、その前に日課がある。大したことじゃない。体内の時計がずれていないかどうか確認する。
部屋の壁にアナログの時計をかけてある。下手に入り組んだ機械より信用できるそいつへ視線を向けた。まだ起動したばかりで起き上がるのもダルい。
「おい、アクセル」
「ン?」
呼ぶと、振り返りもせずに返事をしやがった。それもかなりおざなりだ。
「邪魔だ」
「んーんー、なんで? んん。おはよ」
ベッドの上で背伸びをしている。で、振り返らない。オレが見たかった時計の前を遮って、座ったまま何度も、だ。アーマーなしの背中に背骨状のラインが浮き上がり、腕を上げて伸びるたびに小さく揺れる。
「時計が見たいんだよ。お前がそこにいると見えねえ」
「時計よりボクを見たほうが面白くない?」
「フッ……、くくっ、変なことを言うんじゃねえよ」
「変かな?」
横たわったまま吹き出すと、ベッドがかすかに軋んだ。二人、乗ってるからか。もう一回、更に軋む。アクセルがこっちに来て、オレの顔を覗き込んでいる。
「変じゃないよ。ボクって見てると飽きないってよく言われるし、レッドから」
「ああ? そういや確かに、何回か言った気がするが」
「ね、時計合わせるの? ボクのと合わせればいいじゃん」
「ちゃんと正確ならな」
「ボクのボディは時計だって正確だよ、あったりまえじゃん! へへ、端末出して」
「勝手にしろ」
「うん!」
オレを上から覗き込んでたアクセルの顔が、降りて近づいてきた。
視線を傾ければ既に壁の時計が視界に入った。が、このままで構わないか。