あたためておいた お布団がまるまると盛り上がっている。うまく隠れたつもりかもしれないが、おれにはしっかり見通しだ。お尻隠して頭隠さず! 頭はこっちかな、お尻がこっちかな?
お布団をペラっとめくる。
「ふっ、あははっ! そっちは足の方だ!」
グランツのお尻が笑った!? じゃなくてお布団の中から元気よく笑っている声が聞こえた。間違えてめくってしまった足がジタバタしてる。
「すまんすまん。寒かったかな」
おれがめくったのと逆側のお布団から、グランツがチラッと顔を出した。まだまだ笑って、肩を揺らしている。白いお布団と枕の上で、青い髪がキラキラサラサラ波打っている。
「キミも早くベッドに入った方がいい」
「うん、もちろん。お待たせいたしました」
「ふふ」
お昼のグランツが、お腹を抱えて大きな声で笑っているのもすばらしいし、今のようににこにこ笑顔で、静かにうれしそうにしているのもとてもうれしいことだ。見ているおれにとっても、うれしい。
「上機嫌だな、デグダス。おっと、冷たい」
「お? 湯冷めしちゃったかな」
お布団の中でおれの腕をグランツが掴む。とってもあたたかい。逆におれが冷えちゃっている。お風呂の後に仕事の道具をいじったりしていたせいか。
「夜はもう、少し寒いくらいだものな。うっかり風邪をひかないように気をつけなければ」
「キミは採掘のことを考えると熱中しすぎてしまうからな。風呂の後にあんな格好でウロウロしてちゃいけない」
「しかしそれはグランツにも言えることじゃないか? これからの季節はお布団も冷たくなるし、ちゃんと寝間着を着てだな」
「いいじゃないか、キミとこうしてたらあたたかいわけだし」
「ウム、たしかにお布団はあたたか……あれ? お布団があたたかい」
冷えた身体にお布団がじんわりあたたかい。グランツもあたたかだが、お布団だってあたたかい。気がつけば包み込まれるようなあたたかさ。部屋の中の肌寒さから予想される冷たさとは全く違う。
「気がついたか? フフッ、あたためておいたんだ」
「お、お布団を? そのために先にお布団に入っていたのか? そんな……な、なんて優しいんだ!」
「あっはっはっはっは、大げさだな! ちょっとした冗談……先に寝てただけだぜ?」
「いいやおれは今グランツの優しさに猛烈に感動している」
「ふふっ、キミが喜んでくれるなら、ふふ、なんだっていいんだが。さ、もっとあたたまってくれ。まだキミの肌は冷たいみたいだ」
「まかせておけ! おれはカッとなったりポッとなったりするのには自信がある!」
感動でワッとなった気分にまかせてお布団の中でグランツを抱きしめると、やはりポカポカでもっとあたたかい。すると心がポッと熱くなるわけだ。