両方食べるには デグダスは、まさに目は口ほどに物を言うという言葉がぴったりだ。
「こっちの方がよかったか?」
「え!? いやいや。……なーんでわかったんだ?」
「なぜだろうな? キミが昨日の寝言であんこが食べたいと言っていたからかもしれないな」
「おれは昨晩そんな寝言を言っていたのか。もしかして、今日のマーケットにたい焼き屋が出ていることを予知していたのか!? むむむ、予知夢……」
「まあ寝言というのは冗談なんだが。それで、どうする? 交換するか」
「ん? 交換? おまえのあんこと、このおれのカスタードを?」
「そうだ。いいアイディアだろ?」
まだホカホカの二つのたい焼きを見比べつつ、真剣に考える。今、キミの顔に浮かんでるのは「困ったな」の文字。なるほど。
「それか、半分ずつ」
「はんぶんこか!」
パッと表情が明るくなって、「うれしい」「それだ」「最高!」が浮かんで見える。
やっぱり目は口ほどに物を言う。近くで見てれば全部わかる。
「あ、いや、しかしだな」
「うん? それじゃ足りないか?」
あれ、ちょっと違ったか? キミが不満顔ということは。
「こうしよう。一口ずつ交換だ! はんぶんこはちょっと、おれは欲張りすぎたな」
「あはは、謙虚だな! でもキミの一口、たい焼き半分ぐらいはあるんじゃないか?」
「そんなことはない! おれはおちょぼ口だぞ」
「あっはっはっはっは」
大きな口をすぼめてそう主張するキミがあまりに真剣な目をしているので余計に笑ってしまう。交換するのが一口でも半分でもそれぞれ一匹分になるのは一緒じゃないか? ということは、言わずにおいた。