まぶしい 目を閉じて真っ暗でも、キミの隣りだとなぜだか少し眩しいような気分でいられる。少しおかしい感覚かもしれないな。夜も遅くて、寝室のランプも消して、二人で黙って目を閉じて、眠りに落ちる瞬間を……多分、待っているんだけど、眠らずにこのまま目を閉じているだけでも充分満ち足りている。
昔のおれは、夜ってのはどこかに取り残されたような気分になるから好きじゃなかった。今は全く違う。夜は好きだ。昼間離れてても、夜にはこうしていられるし。
ベッドの中を手探りで、キミの身体をまさぐる。キミは結構寝相が悪いから、毎晩色んなポーズで眠っている。おれはそんなキミの身体のあちこちを触りたい。それじゃ変態みたいだな。でもそれが本心だから仕方がないか。触りたいのは腕も足も背中も、色々だ。今日は腕がいい。隣に並んでとても近くで寝ているんだけど、今は特にキミの腕が恋しい。だからベッドの中で少し探さないといけない。どうせ目を開けても暗闇だから、目は閉じたまま。
キミの腕はここだ。たくましくて太い腕は、ちょっと触っただけじゃ背中なんだか腕なんだかわからない。だから形を確かめるためにそっと撫でる。フフっ、仕方がないことなんだ。
腕の形、力が抜けてて柔らかいキミの腕、いつも手袋とアームカバーで目立たたないけど、そこにはもじゃもじゃの毛が生えている。指に絡められるくらいには長い。手の甲から腕のあたりの肌の上を指で指でくるくるして。どうしてかわからないがこの感触が好きだ。楽しくなってくる。キミはもう寝てるのかな? 好き放題にしてしまっているが。といっても静かな夜のベッドの中、もう寝てるような起きてるような感覚で、ゆっくり、まったり。
「ん、む、むふふ。ふが」
「デグダス?」
「むっ」
寝言か? それともいびきか? どっちともつかないような、微かな声が。しかしその割には不規則だったような。不思議に思って、小声で名前を呼ぶ。夜は静かだから。
「おれはもう眠っております」
小声の返事。そんな流暢な寝言ってないだろう。でもおれは目を閉じたままだから、キミの言葉がホントか冗談かわからない。夜のおしゃべりは、そんなふわふわした感触も楽しい。
「ふっ。くすぐったかったか?」
「すこーしな。すこーしだけ。でもな、そこはおれの頭ではないんだぞ。それなりにもじゃもじゃだけれども……」
「あはっ、キミの頭がこんなところにあったら、ベッドの中で息が詰まっちゃうんじゃないか」
「そうだぞ。だからおまえがよしよししているのは頭じゃないんだ。頭じゃなくていいのか?」
「頭……そうだな、頭も触りたいな」
「よしよし」
あれ? ベッドの中でキミの腕がモゾモゾ動いた。おれが触ってたキミの腕……動いてどこかに行ってしまって、逃げられた。でもそれはいい。もっと身体ごとキミが近づいてきて、ピッタリくっついてしまった。
でもその腕が、おれの背中側からぐりぐりと頭を撫で始めた。
目を閉じたままの真っ暗で、何も見えないが多分今はそんな状況だ。うん、これじゃ話があべこべだ。
「よしよし……ムニャ」
それも全く悪くない。キミのおしゃべりはもう半分寝言だ。相変わらず目を閉じているのに眩しいような暖かさ。今日はこれでいいか。これがいい。