崩れる! 静寂だった。無闇に辛気臭く、屋根すら吹き飛んだ埃っぽい瓦礫の中に風が吹き込み、砂埃が舞う音まで聞こえる程度には。
さっきまでは。
雪崩を起こした瓦礫の最後の一片がオレの頭の横をガコンガコンとけたたましく音を立てながら落っこちてった。耳に反響するほどにやかましい。
「……てめえ、オレが避けなかったらどうなったか、わかってんのか?」
「うん。レッドなら避けないって信じてたよ!」
オレを下敷きに瓦礫の上に着地しておきながら、悪びれもせずにそいつは言う。まだ、オレの膝の上にいる。こいつが現れただけでとんでもねえ騒がしさだ。一体どこから飛んできたんだ? 呼びかけられて振り返った時には、既に避けるか避けないかの二択を迫られる瞬間だった。それも真っ昼間の逆光の中だ。余地はない。どんな思考回路と身体能力してんだか、常に見当が付かない。
「で、何しにきた」
「あっちの調査終わったから手伝いに。ボクが協力したらすぐだよ」
「だろうとは思った」
「へへ。ん? ボク、すっごい役に立つよ! なにこの手。ボクに起こして欲しいの?」
「バカ、逆だ」
「へっ?」
オレの伸ばした手を掴もうとしながら、アクセルは大した考えもなしに膝の上から立ち上がろうとした。ちょうど瓦礫の積み重なった危ねえ部分だ。案の定、バランスを崩してすっ転ぶ。
「わああああぁぁっ」
ひっくり返って叫ぶわ瓦礫の雪崩を起こすわ、更に賑やかになる。一人で勝手にこれをやってるんだから感心する。
「なんだって? 役に立つ……って?」
「今のはちょっと油断しただけ!」
ひっくり返って拗ねてるこいつに改めて手を貸してやると、今度はしっかり力を込めて握り返してきた。