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    masasi9991

    @masasi9991

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    masasi9991

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    土蜘蛛さんと大ガマさんが出会ったときの話

    ##妖怪ウォッチ

    川のぬし 通りすがりの農民から、不思議そうな目で遠巻きに眺められる。ここらで見ぬ顔だといことであろうから、致し方のないことだ。しかし数日こうしていれば、きっとすぐに見飽きた顔だと思われるようになるに違いない。しばらくの間この付近に館を構えるつもりであるから、こうして顔を売っておきたいのだ。売れるほどの顔はしておらぬが、ともかく。
     そういうつもりでしばらくの間、特に真昼のまったく妖怪の類など出そうにもないのどかな時間に、川のほとりに座って釣り糸を垂らしていた。別段魚も好きではなし、となると釣りというのもそう楽しめる質でもないが、先に述べた目的のため、餌も針もろくに付けていないような糸を川面へ。真っ昼間の陽気と相まって、川面は実に清浄である。良い土地だ。
     で、数日そうしていると、遠巻きに眺めていた農民らも少し見慣れてきたらしくじわじわと近づいてくる。害のないのと思われればそれで結構。次第に、「釣れますか」と尋ねてくる者もあり、それに対して静かに笑って首を振る。どこから来たのか、何を生業としているのか、明日は雨であろう……などといった言葉も交わす相手も増えてくる。
     あるとき背後に素足で土を踏む足音がして、振り返ろうかとしたそのときにこう尋ねられた。
    「一体何を狙っているんだい」
     童の声だ。毎日毎日、まったく釣れずにいるのに飽きず糸を垂らしているのを、からかうような声色だ。そこで吾輩は振り返るのをやめにして、背を向けたままこう答えた。
    「この川に大きなぬしが棲んでいると伝え聞き、西の方からはるばるやって来たのだ。すぐに釣れては張り合いがない」
     と、予め用意していた言い訳をつらつらと述べた。
     ぬしの噂を伝え聞いたのは本当だが、そのために居座っているのは大きな嘘である。餌も針もおざなりの糸は、もちろんのこと。
     吾輩の答えを聞くやいなや、後ろの童は急に大きな声で「アッハッハ」と笑い出した。
    「そんなんじゃここのぬしは釣れやしないさ」
    「何んと?」
     あまりに愉快そうに笑うものだから、つられて振り向く。するとそこには、誰も居ない。
     大きな足音は聞こえていた。裸足で土を強く蹴るような。それがのどかな森と山と川のせせらぎの合間に響き、正午の日差しが僅かに陰り、次の瞬間、大きく水の跳ねる音が!
     ぼちゃん! と飛沫。また振り返って川を見る。そこへ何かが飛び込んでいた。川面に大きなうねり。すでに、透明な川の底まで潜っている。ずんぐり丸い緑の背中が泳いで川上へと向かっている。
     まさか妖怪が妖怪に化かされるとは。確かにあの丸いのは、魚のようには釣り上げられぬようだ。
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