ハグの日「デグダス!」
目があった途端、グランツは一気に笑顔になった。こんなに遠くてもよくわかる。おーいおーいと大きな声で手を振ってこっちへ走ってくる。
「グランツ! 久しぶりだなあ」
「あっはっはっはっは! 今朝の『行ってきます』から、かなり久しぶりだな?」
「うん、そうだ。おまえと別々に採掘へ向かう日は、一律千円の思いだ。……噛んだだけだぞ、今のは」
「あははは、そんなこと言われたら照れるじゃないか」
グランツは相変わらずニコニコで、そのままスキップを始めそうな足取りで帰り道を歩き出した。
と、思いきや急に立ち止まってクルッと回りこちらを見る。
「そっか、久しぶりか。じゃあこれをしないとな」
「お」
おれの前でグランツが両手を大きく広げた。
「おれの方が大きいぞ」
負けじとおれも両手を広げる。
「ふはっ。そういうことじゃなくてさ」
「わかっている。おれがしたいのは、こうだ!」
両手を広げたグランツを、さらに包み込むように! ギュッと!
なにしろおれの方が大きいので、こうすることもできるのだ。先にお久しぶりと言ったのはおれの方なのだから。
「久しぶりの再会にはやっぱりこれだな」
「ああ。何しろ今朝ぶりだからな」
おれの胸板にほっぺをくっつけたグランツがケラケラ笑っている。採掘帰りだから汗臭かったり泥まみれだったりするのは申し訳ないところだが。しかし久しぶりで寂しくとも、グランツの笑顔が見れるなら満足だ。