少食かもしれない いつも、ご飯のときはお喋りだ。もちろんご飯のとき以外もグランツはとってもお喋りだ。それによく笑う。しかしやはり採掘師にとって食事は全ての基本、だからこそご飯のときはいつもよりも楽しくお喋りになるものなのだ。
「デグダス、こいつも美味かったぜ」
「ム? ……ごくん。どれだどれだ?」
「ふっふっふ。これだ。……熱っ」
と笑いつつ、グランツは大皿に積まれたチキンを一切れ口に入れた。菜っぱのサラダの上に、ソースで照り焼きにされたチキンがこんもりと積み上がっている。出来たてでまだソースはじゅうじゅうと音を立ててさえいる。音と匂いと焦げ目の色がいかにもうまそうだ。
「んふっ、ふふ、さっきのキミの顔」
熱いと言いつつニコニコ笑って、熱い肉を口の中でハフハフとしつつ、それでもまだお喋りが止まらない。
「こらこら、食べながら笑うのも喋るのもお行儀が悪いぞ」
「ん」
返事をしながらムと口を閉じた。ほっぺたが膨らみ、唇を少し尖らせる。いい顔だ。
ご飯をおいしそうに食べているときのグランツは、それはそれはとてもいい顔をしている。
「ほら、キミも食ってみなよ」
そしてきちんとごくんと飲み込んでから、箸にチキンを摘んでおれの前に差し出した。
「おいしそうだ! でもそれはおまえが注文したものだろう? さっきからおれにばっかり食べさせて、おまえが足りなくなっちゃうじゃないか」
「そうか? でも確かに、まだライスも二杯しか食べてないな。キミの食べっぷりに夢中で忘れてた」
「ほら! そうだろう! おかわりしよう! ご飯大盛り二つ!」
「キミは何杯目だっけ? このチキンももう一皿注文してもいいかな」
「いいぞいいぞお。グランツはいつも少食気味だからな、もっと食べよう! あとは魚も食べたいな」
「魚だったらさっき店主が今日のおすすめがあるって言ってたぜ」
「それにしよう! おーい店員さん! ……あ!」
っと気づいたときにはグランツの摘んでいたチキンはグランツのお口の中へ。しまった! あんなにおいしそうに「あーん」してくれていたのに! しょんぼりだ。
「ふっふっふっふっふ」
そんなおれに気がついたのか、グランツはまた笑っている。口は開けずに声は出さずにお上品に、しかし我慢できないというふうにニコニコもぐもぐ。おいしそうで楽しそうでなにより、なのだが……。
再びごくんと飲み込んだその顔もとてもいい。が。
「まだ沢山あるぜ、ほら」
「お!」
再び、これは!
しかしそのときちょうど店員さんが注文を取りに来た。チキンはもう少し待たなければならない。