寒い日の帰宅「グランツ! おかえり!」
「あっはっはっは。キミもおかえり」
「ただいま!」
一足先に玄関に上がったキミは、おれの方をくるっと振り向いて両手を広げた。そうされると抗えずその腕の中に飛び込んでしまう。
飛び込んだキミの胸は柔らかい。そのまま大きな腕が力強くおれを抱き上げて、ちょっと床から足が浮いた。お互い外から帰ってきたばかりで胸も腕も少し冷たいが、キミに抱きしめられてるだけで寒さなんて吹き飛んでしまう。
「ううっ冷えているなぁ。早く暖炉の前で暖まろう」
「キミも同じくらい冷えてるぜ。だってずっと一緒に居たんだからな」
「しかし不思議なことにおまえの方がよく冷えている……ような気がする! おれの胸の暖かさでは追いつかないようだ。やはり早く暖炉に火を入れて……急げ急げ」
「んっふっふっふっふ。待ってくれ、靴を脱がないと」
おれをぎゅうぎゅうに抱きしめて暖炉まで引きずっていこうとするキミに抗うのはあまりに困難だ。だけど流石に土足で家に上がるわけにはいかないし。キミのそんなうっかりなところも、大好きだけど。