いらないのなら貰ってしまって構わないよな?急な話をすまない、オレの話を聞いてもらいたい
高校の時にオレには好きな人がいたんだ、告白はできなかったんだがな?
相手は一つ下の後輩で、オレのことは少し苦手な相棒の尊敬する先輩…ぐらいにしか思われていなかったんじゃないだろうか?
それでも、オレは彼を好きになってしまったんだ
歌っている姿がかっこいいと思ってしまった、意外と優しいやつだとわかってしまった
相手のことをちゃんと見ているんだなっと、わかればわかる程に愛しさが募るばかりでどうしたらいいのかわからなかったのがいい思い出だな?
その後輩の名前は東雲彰人、夕焼けのような綺麗なオレンジ髪に黄色のメッシュが入った、オレの初恋の人
彰人が高二の時に彼女ができたと聞いて、オレの初恋は見事に終わってしまったのだ
元々言うつもりはなかった想いだから、振られたとかではないが中々に辛いものだな
ちなみに子の気持ちは他の人にはバレていない、オレの持ち前のスター性で隠していたからな流石オレ
……彰人も楽しそうにしていて、オレは諦めなきゃなと思った
そのそも、もう直ぐ卒業してしまうから良い機会なのだろう
卒業式の日、なんだかんだ関わっていた後輩が泣きながら挨拶に来てくれた
こんなに慕われていて嬉しく思う中、つい探してしまった「綺麗な夕焼け色」を
そしたら、彰人は冬弥と一緒に来ていた
「司さん、ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう、冬弥ふふ、彰人もお祝いに来てくれたのか?」
「…まぁ、あんたには一応世話になったし、冬弥が行くぞって言っていたから」
ここは冬弥に感謝だな、最後に彰人に会えただけでもオレはすごく嬉しい
あ、でも、少しぐらいわがままは許されるだろうか?
オレは第二ボタンを外し、そのボタンを彰人に渡した
彰人は不思議そうな顔で首を傾げながら、それを見ていた
「彰人最後のオレのわがままだ、そのボタンを受け取ってもらえないだろか?」
「…?なんでオレなんですか?冬弥とか暁山とか杏とか…他にもいるだろう?」
「うーん…でも、オレは彰人に持っていて欲しいんだ…だめ、だろうか?」
「……まぁ、別に良いっすけど」
不思議そうな顔のまま、彰人はボタンをポケットにしまっていた
あのボタンに、オレの気持ちを込めて…これぐらいは良いよな?
そう言うふうに思いながらオレの高校生活は終わりを告げたのだ
そうしてオレもお酒が飲めるとしになった
普段はあまり飲まないが、今日は久々に元神高生が集まると言うことで、会えるのではないか?と思い
飲み会に参加していたのだが、なぜか彰人は来ていない様子で首を傾げてしまった
飲み会が始まって数時間後、冬弥が電話に出ていたらしく外から帰ってきていた
だがその顔はなんだが少し元気がなく、オレは冬弥の横に座り直しどうかしたのか?と話を聞くことに
「あ、司さん…実は先ほど彰人から連絡があって…今日の飲み会は行けないって言っていたんです」
「何⁉︎そうなのか…会えると思っていたから残念だな…」
「……その、司さん…彰人なんですけど…」
言いづらいのか目線を泳がしながら冬弥が言葉を紡ごうとしていた
そんな冬弥が珍しくて、本当に心配になってしまった
もしかしたら彰人に何かあったのかもしれない、体調が悪いのか?それをも誰かに何か言われたのか?
彰人は優しい子で、自分より人のことを優先してしまうのだ、だから本当に心配してしまう
だが、冬弥から放たれた言葉はオレの想像をはるかに超えたものになっていまっていた
「冬弥……今、なんて言ったんだ?」
「…彰人が彼女に振られたようなんです、しかもその彼女さんが…別に男を作っていたらしく…」
「彰人は…その現場を見てしまったのか?」
「…一緒に住んでいたマンションだったらしいんです、で、今彰人はそこから飛び出して外にいるみたいで…」
「すまない冬弥、彰人はどこにいるとか言ってたか?」
「いえ、そこまでは話してくれなくて…って司さん⁉︎どこに…」
「すまないみんなオレはここでお暇させていただく、お金はここに置いておくな?また誘ってくれ」
オレはカバンを持って飲み屋を後にする
彰人がどこにいるかはオレにはわからない、わからないが電話をかけてみた
一か八か、出てくれることを願って
何回めかのコールで通話が繋がった、鼻声のもしもしって声が聞こえて胸が締め付けられる
なぜ、なぜなんだ、彰人が何をしたと言うのだっ
あんなに幸せそうに笑っていたのに、なぜ彼女はこんな仕打ちをしたんだ?
なぜ、彰人を苦しめたんだ?モヤモヤとそんなことを考えていたら、もう一度もしもしと声が聞こえた
彰人がなんで喋らないんだと不思議な声だったのでオレは慌てて声を振り絞る
「も、もしもし彰人お前今どこにいるんだ」
「……センパイ今1人?」
「へ?あ、ああ…飲み屋から出てきて今は1人だが…」
「神高近くの公園、センパイ、オレ、スマホと財布しか持ってきてなくて…寒い」
「っ⁉︎わかった、温かい飲み物を持ってそちらに行くからどこかコンビニでも入れるか?」
そういうと彰人は今の顔のままは入れないから公園にいると言っていた
十月も半ば、もう外は肌寒くて慌てて出てきたと言うなら、上着も着ていないんだろう
通話を繋げたまま、オレは近くのコンビニに入り、彰人が好きそうなココアと
多分ご飯も食べてないだろうから、肉まんとあんまんを買ってコンビニから出ては公園まで走った
その間も彰人は涙が止まらないのかしゃっくりを上げながら泣いている
早くその場にいき抱きしめてやりたい、そんな一心で走る
懐かしい神高を通り過ぎ、彰人が言っていた公園までたどり着いた
息を切らしながら、公園内を探しているとブランコに見覚えのある髪色が見えた
近づいては、彰人と名前を呼ぶと顔を上げる
目が泣きすぎて真っ赤になっている…そして彰人の手にはボタンが握られていた
それは…高校の時にオレがあげた第二ボタンだった
なぜ、彰人は今それを持っているんだろうか?
「す、すまない、彰人…寒かっただろう?急いで走ったのだが…とりあえずこれを…」
「?…ココアとなんか食べ物…?」
「何も食べてないと思ったのだが、食べれそうか?」
「わかんねぇ…センパイ、隣いてくれます…?そしたら多分食べれると思うから」
その言葉にオレは頷き、それをみた彰人はゆっくりと食べ始めた
その間も彰人はチラチラとオレがちゃんと隣にいるか確認しながら食べている
心配なら手でも繋いでおくか?と聞いてみたらっ無言で繋がれてしまった
いっそのことオレを腕の中にでも閉じ込めるか?と少し笑って聞いてみたら、問答無用で彰人の腕の中
うん…びっくりしたが、今はこのままでいいか
肉まんを食べ終わり、あんまんを食べ始める彰人を見ながら、このあとどうするか考える
彰人を実家に送るか?それともここから近いオレのマンションに連れて行くか?
「うーむ、どうするか…彰人今日そのまま実家に帰るか?それともここから近いオレのマンションに来るか?」
「センパイ家?…なら、今日センパイの家に泊まっても大丈夫ですか?…実家今誰もいないみたいなんで」
「誰もいなかったのか…なら、オレと一緒にマンションに帰るとしよう」
それからあんまんも食べ終わったのか、立ち上がる彰人に合わせオレも立ち上がる
こっちだぞと手を繋いで道を歩き出す(内心ドキドキだがバレないように必死だ、手が熱い)
ただ、やはり男同士で繋いでるのはまずいか…?と思い手を離そうと思ったら、ぎゅっと握り返された
まるで、離さないでと言われてるぐらい、強く握られていた
思わず、彰人?と後ろを振り返るとこのままでいいから、歩いてと言われてしまった
手を繋ぐのはいいらしい、ちょっと、いや、かなり嬉しい
そのあとは歩きながらココアをなぜかオレに渡してきたり(パーカーを貸してしまったためオレが風邪を引くと思ったらしい)
彰人が「センパイ、体温高いんすね」とか手をいじりながら言ったり
そんなことを言いながらマンションにつき、何階?と聞かれたので7階と答えながらエレベーターに乗る
泣きすぎて眠いのか少し瞼が落ちてきた彰人を見ながら片手で鍵を探す
なかなかカバンから鍵が出てこず、見かねた彰人がカバンから鍵を探してくれた
「オレのカバンなのに彰人の方がすぐ見つけるの面白いな…」
「センパイなら小さなポケットの中に入れるかなって思ったから、開けても大丈夫ですか?」
「うむ、開けて大丈夫だぞ」
ガチャっとドアが開く音がする
ただいまと独り言のように呟けば、隣の彰人がおかえりと言ってくれた
なのでオレも彰人におかえりと笑いかければ、今日初めての口元を緩めた彰人が見れたのだ
リビングにカバンを置き、お風呂を沸かしに洗面所まで行く
彰人に冷蔵庫の中勝手に漁って構わないぞと伝えると、申し訳なさそうになかを見ていた
確か…咲希にもらったプリンがいたはず…
彰人もプリンに気づいたのか、「プリンある…」と呟いてるのが聞こえたため
風呂場から顔だけ出し、食べていいぞと答える
えって声が聞こえたが、二つあるからあとでオレも食べると答えたらおずおずと机に持っていっていた
すまない、プリン食べてふにゃって笑う彰人が見たいんだ
お風呂の掃除が終わり、手を洗いオレもプリンを持ってきて彰人と一緒に食べる
「ん、美味しいなこのプリン」
「これ、最近できたケーキ屋のプリンですね…絵名とこの前いきました」
「お姉さんと行ったのかオレもこの前妹と行ってな、昨日妹が買ってきてくれてな?」
「そうだったんですね…あ、その…飲み会みんないました?」
「ん?そうだな…ほぼ顔見知りのやつはいたな?…いや、暁山はいなかったな…用事があるって言っていたらしいが…」
暁山の名前を出すと彰人があー…と意味ありげな声を出していた
申し訳なさそうな声のあとに「多分オレの件で動いてたんだと思います」と言っていた
暁山はこの件を知っていたらしい…むしろお姉さんも知っていたからその話で暁山に聞かれたんだとか
ってことは、彼女が別の男と浮気していたことはお姉さんと暁山に筒抜けであって…?
今日その2人は飲み会に参加していなかったから…
うん、これは探しに行っているな…?怖いな…女性は…
あまりその後のことを考えることをやめたオレはプリンを食べ進めることにした