いつからか、夜が来ることが怖いと感じるようになった。
真っ暗闇の世界に自分一人だけが取り残されたみたいで、心細さに泣いた日もある。
何に対して怯えているのか。自分でもよく分からないまま、涙はとめどなく溢れ出てくる。ぽろぽろと目尻から零れる涙は枕へと染み込んで、冷たい感触に体を震わせる。両腕で己の体をぎゅっと抱き締めながら、無理矢理まぶたを閉じ、まどろみの中へと落ちていく。意識をたゆたわせながら、終わりのない夜がいずれは自分から全てを奪っていくと、カガリはこの時本気で思っていた。
「姉さま、お体の調子が悪いのですか?」
「え……」
トーヤの気遣わしげな声に顔を上げれば、丸いふたつの瞳に心配の色が浮かんでいる。どうやら書類チェックの合間に意識を飛ばしていたらしく、手元に持っていたはずの紙がはらりと机に落ちていた。
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