ハグ 「15cmがハグのしやすい身長差らしいですよ」
「はぁ」
「ノイマン大尉は173cmでしたよね?」
「そうですけど」
脈絡もなく身長差がどうとか言い出したハインラインに適当に相槌を打っていたノイマンだが、突然自分のパーソナルな部分をさらりと言われ、なんで知ってんだよという言葉は飲み込こんだ。
「今日はハグの日だそうです」
「ハグの日?…あぁ8月9日ね」
「そうです。言葉遊びのようなものですね」
「はぁ、それで?」
「ですのでハグ、しましょう」
「なんで?」
なにが「ですので」なんだ?どこに掛かってる「ですので」だ?先程の身長差15cmの話なら、2人に15cmの差が無いといけない。だがどう見たって…。
「ハインライン大尉は身長188cmなんですか?」
「まさか」
「ですよね」
「ですので、さぁ」
ハインラインは両手を広げノイマンが飛び込んでくるのを待っている。だからなんの「ですので」なんだよ。めんどくさいなぁなんて思いながらノイマンはハインラインの腕の中に滑り込んだ。
「どうですか?」
「どう、と言われても」
「ハグしにくいですか?」
「いや、それは別に…」
ハインラインの声が耳のすぐ近くから聞こえてきて心臓に悪い。声が良すぎる。その声から逃げるべく身をよじるが、ハインラインの両手が腰から離れない。というか腰の後ろに回された両の手は組まれてしまい、少し仰け反った体制で留まる事になった。
「そもそもハグしやすいしにくいってなんだよ…ハグできればそれでいいんじゃないですか?」
「さすがノイマン大尉。僕の見込んだ男だ。僕も同意見です」
「はぁ…」
「ですので、身長差などいう障害は僕達には関係ないのです。だからこれからもハグしあいましょう」
「お断りします」
「なぜ!?」
というかそろそろ離れてくれないかな、などと思っていたらそんな提案をされた。そんなの断るに決まってる。
ハインラインのボディにノイマンの拳が入るまで、あと10秒。