再会の日 いつもは自分の身の回りのことはきちんと自分でしている兄が、その日は珍しく私に本の整理を頼んできました。延べてあった布団の枕元にあった数冊を、母屋から庭を挟んだ向こうの蔵にしまって来て欲しいと言うのです。
その日は特に用事もありませんでしたし、渡された本を抱えて素直に蔵に向かいました。
そこは、蔵と言っても兄が普段出入りしている書庫のようなもので、風通しはそこまで悪くありません。少しだけひんやりとした中の空気に混じって埃っぽさを僅かに感じる程度でした。幼い時分に弟と潜り込んで探検しているうちに眠り込んでしまい、両親と兄が血相を変えて探しに来た時を思い出して、誰も見ていないのに思わず少し肩を竦めてしまいました。あれから基本的には大人か兄が一緒でないとここには入っていけないと言い渡されたのでした。もう一人でも出入りできるようになってからしばらく経つのに、蔵に入るときはどうしても胸が高鳴ってしまいます。
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